二粒目 K視点 ページ8
俺はこの前、再度藤ヶ谷に対する想いを知ってから自分なりにちょっとした事だけれど彼にアピールを始めた。
その内容は藤ヶ谷がいる教室に行って、横尾さんに教科書を貸りるというものだ。とても効果があると思えないが、意外にも効果てきめんだった。
藤ヶ谷は横尾さん以外に友達と言える人が居ないらしく、俺が教科書を貸りるときに嫌な顔しながらも付いて来る。
まるで「渉に近付くな」と言っているようで、最初は怪訝な顔をしていたが日々を重ねていくと藤ヶ谷の表情はかすかに緩やかになっていた。
今日も数学の教科書を貸りに行く。横尾さんは毎日のように貸りに行っているのにも関わらず優しく迎え入れてくれた。
優しい横尾さんに甘えて、俺の足取りは軽くなって少しスキップをしながら隣の教室へと向かっていった。
「横尾さーーーーん!」
人混みが多いため、軽く身体を跳ねらせながら手を大きく広げて勢い良く振る。けれど、横尾さんは真剣に本と見つめ合っていて全然気付く気配は無かった。
何故だろうと疑問に思い始めたところに、隣に気配を感じてそちらに顔を向ける。するとそこには横尾さんを自分と同じ様に見つめている藤ヶ谷がいた。
そちらに顔を向けた気配に気付いて、藤ヶ谷も此方を向く。また目と目が絡み合う。再び心臓が高鳴って鼓動の音が耳にまで届いた。
「……また、貸りに来たのかよ、」
後ろで手を組んで、華麗に立つ姿とは違って口から出たのはあの時のような棘だった。心に刺さる物はあるが、前よりは柔らかいのでそれは半減された。
「……う、うん」
その棘を飲み込んだ後、何とか応答する事ができた。俺が応えた後藤ヶ谷の目が一瞬揺らいだ気がする。けれどすぐに見据えた冷たい目に戻り、教室に入っていってしまった。
すぐに藤ヶ谷は帰ってきて、手に持っていた数学の教科書を胸に押し付けてきた。いきなりの事で反応が遅れ、咄嗟に手に取った教科書は折り目が全くなく綺麗で裏を見ると○○と丁寧に書かれていた。
「しょうがないから、俺の貸してあげる」
藤ヶ谷が貸してくれる事実にも驚くが、それよりも言った覚えがないのに求めていた教科を持ってきた彼に吃驚した。
「……な、何で?俺、教科言ったっけ?」
「……あ、いや。た、たまたま、知ってたんだよ!」
明らかに目を泳がして、誤魔化している様子の彼に何かが引っかかった。けれど深入りしてしまうと嫌われてしまうので、満面の笑みで手を振りながら藤ヶ谷の元を去った。
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作者名:supia | 作成日時:2021年10月19日 21時