検索窓
今日:1 hit、昨日:10 hit、合計:31,321 hit

ページ7

俺が慌てた声を上げると友達も急いで身体を起こして屋上を素早く後にした。廊下を走っていく。

その途中人に会うことは無く、それが俺達の気持ちを煽らせた。けれど誰もいない廊下を走るのは爽快で、つい癖で唇を軽く舐める。

教室の扉を勢い良く開けるとクラスメイトの視線が一斉に此方に向き、身体が少しチクチクする。教師は俺達を睨みつけていて、こばわった身体を無理矢理動かして自分の席に座った。

すると教師は何も言わず、黒板にチョークを走らせ始める。遅刻した時になにも言わないパターンが一番恐ろしい。

背中の汗がじわりと滲んでいった。次から気をつけよう。俺の陰に隠れていた友達は自分の後ろの席に座っていた。

座ってから少し経った後、友達は俺に静かに耳打ちをする。いきなりなだったため、驚いてしまい小さく肩をはねらす。

「これ、一番怖いパターンだよな、」

「……それな」

まるで心の中を読まれたかのように、頭に浮かんでいたことをそのまんま言われたので少し反応が遅れたが何とか応答する。

友達はそれ以上は何も言わなかった。集中を黒板に向けるのではなく、前のように窓に視線を向けた。

校庭では複数の生徒達がグラウンドをぐるぐると必死に走っていた。季節的にはもう秋に入っていて、窓から冷たい空気が肌に伝わる。

もう寒い季節になってきたので、どうやら長距離をしているようだ。自分は運動部に入っているので、それなりに体力はある方だから余裕だと思う。

そんな事を考えながらしばらく窓をのぞき込んでいた。するとさっき屋上で会った藤ヶ谷が、横尾さんと楽しそうに走っているのが目に入った。

ジャージが少しぶかいのか、自然と萌え袖になっている。凄い破壊力だ。汗も少しながらかいているようで、その萌え袖で拭っている。

そんな藤ヶ谷が可愛すぎて、俺は熱くなった顔を隠すように手で顔を覆った。見た目はクール、仕草は可愛いとかたちが悪すぎる。

ちょっと藤ヶ谷を見ただけでこんなにも照れてしまう自分は、本当に彼の事が好きなんだと改めて思い知らされた。

また彼の事を好きになって良いのか分からない。再びあんな事言われてしまったら、俺のメンタルは保つことなく崩れるだろう。それはそれで怖い。

けれどもし、可能性が少しでもあるのならもう一度彼に恋してみたいと思った。

そのためにはアピールしなければならない。それでキツい言葉をかけられるだろう。

それでも良いから、彼に近づきたい。俺の想いは完全にこじらせてしまっているようだ。

二粒目 K視点→←K



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
160人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:supia | 作成日時:2021年10月19日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。