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抵抗していたが微動だにしない彼に観念して、身を委ねるように体重をかけてやる。それでも玉ちゃんは、何気ない顔でスマートに階段を下りていた。

もしかしたら俺が思っているよりも二人は大人に近付いて居るのではないかと思う。あんなもやしのような体型だった彼らからは想像出来ないが、最近感じさせられる色気があった。

少し寂しく思うが、それもまた良いと顔をにやつかせる。ふと頭に浮かんでしまった。もしもあの時、助けてくれたのが藤ヶ谷だったら。

そんなの必死に怒ってくれた玉ちゃんに悪くて、自分を最低と何度も唱えて蔑むが「もし、藤ヶ谷だったら」と妄想してしまう。

仮に助けたのが藤ヶ谷だったら、俺は正気を保つことは難しいだろう。だって、このお姫様抱っこも藤ヶ谷がしたらこんなにも距離が近くなるのだ。いくつあっても心臓が足りないくらい。

そんなくだらない妄想に浸っているといつの間にか、保健室の扉の前に着いていた。流石に保健の先生に見られてはマズいので玉ちゃんはそっと降ろしてくれた。

身体から彼の匂いが漂う。その事に対して変な想像してしまった自分を心の中で殴った。玉ちゃんにお礼を告げると彼は素早く去っていった。俺はそれを名残惜しく見つめる。



何とか適当な事を言って、ベッドで休ませてもらえることに成功した。ふかふかでちょっと薬や湿布の匂いがするベッドに飛び込む。

そのベッドの居心地は、玉ちゃんとのハグには敵わないが断トツで二位に入るぐらい気持ちよかった。うつ伏せで顔を埋めると疲れからか睡魔が襲う。

今では誰にも邪魔されないことを利用して素直に目を閉じた。




『……きもちわりぃ』




「……うわぁっ!!」

頭に再生された言葉に驚いて飛び起きる。頭はまだ覚醒していないのかふわふわとしているが、その言葉は耳に鮮明に何度も繰り返されていた。

映像までは残っていないけど、確実に嫌な夢を見てしまったと確信する。大声を出したのにも関わらず、保健の先生に声をかけられないので不思議に思い、ピンクのカーテンに手をかけた。

開くとそこから眩い夕日の光が差し込んで、思わず目を瞑る。視界を開けるとそこには誰も居なくて、慌てて時計に目を向けると部活が始まる時間が刻々と迫っていた。

俺は慌てて廊下を出てすぐ近くにある階段を俊足で駆け上がり、教室の目の前へやってきた。息切れをしながら扉を開けるとそこには誰も居なくて安堵する。

シューズやユニホームがまとめてある袋を掴み、今度は階段を勢い良く駆け下りた。

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作者名:supia | 作成日時:2021年10月19日 21時

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