もう恋心なんて忘れた (ページ24)

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先程の光景は、昔の出来事にリンクして不安は膨大していくだけだった。その度、自分の身体は震え上がって涙が出てくる。

それを読み取ったのか玉ちゃんは、再び抱き締めてくれた。その鼻につく優しい香りが心地よくて、心は安らいでいった。けれど彼は抱き締めながらずっと謝罪の言葉を口にしている。

よく分からないが、玉ちゃんは一切悪くなくて寧ろ感謝しなきゃいけないのに首を振っても彼は俺の頭の上で「ごめん、ごめん」と呟くだけだった。

「玉ちゃんは、何部に入ったの？」

雰囲気を変えるため、当たり障りのない事を聞いてみる。すると返事はすぐ返ってきて「ボードゲーム部」と細い声で応えた。確か宮田が所属しているゲームをひたすらする部活動だった気がする。

優しい宮田なら快く受け入れてくれるだろうし、運動神経が悪い玉ちゃんらしくてつい笑ってしまった。笑顔を見せる俺に不機嫌になってしまったのか軽くチョップされてしまった。

そんなじゃれ合いも懐かしくて、暖かくて愛おしい。昔は良く小競り合いをして喧嘩をしていたなと感に浸って居るとそこにあった温もりが急に無くなり、思わず顔を上げる。

顔をあげた先には、昔とは大きく変わった玉ちゃんのイケメン顔は視界いっぱいに広がる。肌は更に白くなったかのように透明感があり、睫毛は伸びてて唇が色気さを出しているのに目は、まだあの無邪気さが残っていた。

「……保健室行く？」

もう玉ちゃんではなくて、玉になった彼に見惚れていると優しく口角を上げて微笑んだ。その仕草に恥ずかしながらキュンと心臓が跳ね上がった。

「もう五時間終わるから、……彼奴戻ってくるよ？」

「六時間目キツいなら、保健室でサボったら？」

耳がいつもよりも遠い気がするが何とか、かすかに聞こえる声を聞き分けて脳で理解しようとする。その言葉はまた優しくて、嬉しさで笑みがこぼれてしまうのを隠すように俯きながら頷いた。

頷いた瞬間、身体から重力の重みが無くなって驚きのあまり息が詰まる。状況があまり読めないが俺は今、世で言うお姫様抱っこを弟みたいな後輩にされていると自覚する。

「……ちょちょっ！何すんだよ、！」

急に近付くその肌は、とてもきめ細やかで緊張してしまう。髪の毛はふわふわでその茶髪が軽くほっぺに触れてくすぐったい。股裏と背中に添えられた彼の手からジンジンと熱が伝わってくる。

こんな細い奴が何で足をこんなにバタつかせている自分にビクともしないのだろうか。不思議でたまらなかった。あの時もそうだ。不意に彼奴の顔を思い出して、恥ずかしさが増大する。