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それでも期待を込めて、音が鳴った方を覗く。するとそこには、大きな影が立っていて目を凝らして見ると玉ちゃんの姿があった。
その時俺は、恥ずかしさと屈辱感に襲われて目頭に熱が籠もった。今自分は、どんな顔をしてしまっているのだろう。
きっと、とても情けなくて虚しい表情を浮かべているのだと思った。そんな表情を見せたくなくて、上げられていた腕に顔を埋める。
その後はあっという間だった。玉ちゃんは、俺達の方に早々と近付いて怒鳴っていた。久し振りに玉ちゃんの怒った声を聞いた気がする。
その声は、荒々過ぎて内容までは聞こえなかった。ただそれを唖然しながら聞き流す。友達は、顔を歪めて教室を去っていってしまった。
「みつ、……大丈夫?」
こんな醜い姿な自分に優しく背中を支えてくれて、着崩れた制服を丁寧に直してくれる。けれどそんな玉ちゃんに少し恐怖心が出てしまった俺を「最低」と心の中であしらった。
向けてくれる笑顔が、教室の窓から差し込む光に照らされて光が舞う。懐かしい笑顔でも俺の恐怖心は拭えなかった。
「……ありがとう、玉ちゃん。」
礼を告げた後、「忘れてほしい」と言いかけた言葉を咄嗟に呑み込んだ。何故声に出さなかったのかは、分からないが言ったらいけない気がした。
その後、お互い言うことが無くなって玉ちゃんにずっと背中をさすってもらった。けれど一向に身体の震えは収まらなくて彼は眉に皺を寄せてしまった。
申し訳なく思うが、人間は本能には逆らえない。止めたくても止まらないものがある。いつまでも止まらない震えに痺れを切らしたのか抱き寄せてくれた。
どこまでも甘い玉ちゃんに身を委ね、胸に自分の顔を深く埋める。それに応えるように背中に添えられた手の力が強くなった。
嬉しくて、耐えきれなくて、再びこみ上げてきた涙が溢れる。身体の震えはとっくに収まっているのに涙は、いつまで経っても止まらなかった。
しばらく経って、落ち着きを取り戻した俺は玉ちゃんの胸を押して離れる。玉ちゃんと向き合ってみると、彼の目は目尻が赤くなっていて泣きそうな顔をしていた。
同情で泣いてくれているのか。何処までも優しい玉ちゃんにまた涙が出そうで必死に堪える。この場では、場違いかもしれないがどうしても気になっていた事を口にする。
「どうして、玉ちゃんはここに来たの?」
ずっと不思議だった。最初に思い浮かんでいたが、落ち着きを忘れた自分の頭からはすっかり忘れ去られていて、落ち着きを取り戻したら急に興味が湧いてきた。
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作者名:supia | 作成日時:2021年10月19日 21時