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喉が詰まったが、なんとか息を呑み込む。「何処まで付きまとうんだよ」と思ったが、それは自分も同じ事なので口にはしない。
目の前に繊細さを連想させる○○という人物が映り込んできたのだ。幸いみつとは違うクラスらしいけど細長い身体に眼鏡を掛けた友人らしき人と、楽しそうに走っているのを見ると腹が立った。
何でお前だけが幸せなの?
そう思ったからだ。みつは、多分もう彼奴がこの学校にいることを知っているはず、そして今心を悩ませている。それなのに目の前のそいつは柔らかい笑顔を浮かべていて、とても心苦しくなった。
別にくっ付いて欲しい訳ではないが、みつを真剣に見てくれないのは不思議なことに自分を苛つかせた。昔は、あんなにラブラブだったのにな。
そいつを鼻であしらって、俺は何も置かれていない机に顔を埋めて瞼を閉じる。興奮してしまったせいか、疲れが押し寄せて睡魔が襲ってくる。それに身を委ねるかのようにそのまま意識を飛ばした。
『ぅ、……ぐす。……っは』
僕は身体を必死に丸めて、体温が出て行かないようにうずくまった。けれどその抵抗は虚しく、雨は激しく降り注ぎどんどん体温を奪っていった。
服とは言えないボロボロの布を毛布代わりにして身体に掛ける。けれどそれも穴が数カ所開いているせいか隙間から雨が入ってきて、酷く冷たかった。
雨のせいで、段ボールはもうぐちゃぐちゃだった。少しでも動いたら崩れてしまいそうだ。眠気が襲ってきてその段ボールに身を任せ、僕は耐えきれず重い瞼を閉じた。
『ぉ……ぉ、い。おーい!』
いきなりかけられた声に驚いて大きく肩を跳ねらせた。そのせいで段ボールが少し破けてしまった。誰か知らないが、闇雲にその人物を睨みつける。
降り注ぐ雨で視界が滲むが、色の判別は出来た。まだ起きれていない脳を動かして必死に集中を研ぎ澄ます。目の前の人物は、細かい水玉の赤い傘に花柄が目立つ水色のレインコート。それに地面とほぼ同化している灰色の長靴を履いていた。
『死んでるのか?』
不意に物騒な事を言われて、反射的に身体を起き上がらせる。けれどずっと寝っころんでいたため、身体はバッキバッキで関節の隅々が悲鳴をあげていた。
勿論の事、頭も痛くて一瞬目眩がする。身体を揺らして倒れようとしたとき、そいつが僕の背中を優しく支えてくれた。
『お前、捨てられたのか?なら俺んちくる?』
その時、僕の頭が弾けた感覚がした。それは嬉しいからなのか分からないが、何とも言えない心の温かさに涙が滲む。
そこで、僕は○○に出逢ったのだ。
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作者名:supia | 作成日時:2021年10月19日 21時