もう恋心なんて忘れた (ページ15)

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「ごめん、お待たせ～」

「……おせーわ！休み時間無くなっちまうぞ！」

思った以上に時間が掛かってしまい、友達の気に障ってしまったようだ。軽くチョップを受けて、小走りで廊下を駆け行けていく友達の背中を慌てて追った。

今から俺は、噂の美少年転校生に会いに行く。なんでそうなったかは、数学の授業は終わった後に遡る。

『……美少年転校生？』

『そう。なんか一年に転校生が来たらしいけどその子がめちゃくちゃ美少年らしい』

半信半疑でいう友達に眉をひそめて睨み返す。なんだその噂、俺には興味が無いし見に行きたいとも思わなかった。

ふいにその名を聞いてクールピンク王子の名前が連想される。あの屋上で感じた感情が再び押し寄せた。

『なんだそれ。てかまたネーミングセンスだせぇし』

『また、群がった女子達が付けたんだよ、』

群がった女子達と言うのはファンクラブに所属している女子達の事なのだろうか。けれどその女子達は藤ヶ谷のファンで、何故転校生にそんな命名を付けているのか不思議でたまらなかった。

『え？じゃあ、もうファンクラブが出来てるって事？』

『らしい』

嘘だろ。ということはあの藤ヶ谷の熱烈なファンを横取り出来るぐらいにイケメンという事になる。けれど俺の中での一番カッコいいのは藤ヶ谷で、あまり好奇心は湧かなかった。

けれどこの学校で一番なのは藤ヶ谷なのにその立場を取られてしまったかのようで、少し癪に障った。

『じゃあ、そいつの顔を見て来ようぜ。そいつがどのぐらい美少年なのか確かめてやる』

俺は、席を勢い良く立って謎のガッツポーズを決めた。今の自分には、藤ヶ谷の立場を奪ったその転校生に腹が立って居ても立っても居られなかった。

友達は、そんな俺にめんどくさそうに息を吐いたが「はいはい」と渋々了承してくれた。流石俺の友達だぜ。心の中でこんな奴に付き合ってくれる友達を鼓舞する。

その裏腹に美少年転校生に会って、藤ヶ谷に負けないぐらいの顔なのか見極めてやると心を燃やしていた。覚悟を決めた俺は拳を強く握り締めたのである。

そんな過去を振り返っているうちにあっという間にその噂の転校生がいる、一年三組の教室の前に着いていた。

そこには女子達が群がっていて、その美少年転校生の姿は隠れて見てなかったが、確実にその群がっている女子達の先にいると分かると唾を呑んだ。

歩みを進めるにつれ、鼓動が速くなった。もしかしたらその転校生が俺のドストライクで惚れてしまったらどうしようというとてもどうでもいい不安に駆られていたからだ。