もう恋心なんて忘れた (ページ11)

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手がじわじわと熱を帯びていた。鼓動も止まらないし、頭がふわふわする感覚がする。好きな人に近付くってこんなにも緊張するものなんだな。

初めてとは言えないこの感じ。あの時と同じ匂いが俺の気持ちを更に高ぶらせた。まだ彼の前では素直なことは言えないけど、毎日来る彼奴に期待も籠もっている。

「あれ？俺、教科言ったっけ？」

その時、俺の身体は脈だった。この後、なんて返してあげればよいのだろう。また蔑んで、北山を傷つけるのか。それとも優しく華麗に誤魔化すか。

結局、わざとらしく誤魔化す事しかできなかった。彼にはどう感じたのかは分からないけど、あの時の自分は最高にかっこわりぃ。

窓際の一番後ろの席で、ひとりで息を吐きながら顔を手に埋めて瞼を閉じる。そうすると身体中に心臓の音が響いた。まだ鼓動がおさまらない。

北山は今、貸した教科書を使っているのだろうか。ちゃんと勉強しているのかな。

北山を考える事も自分に資格が無いのに、つい頭が真っ白になると頭に浮かんでしまう。そんな自分を殴りたい。だから俺は必死に何も考えたくないので勉強を人並み以上にした。

家に帰っても、やっぱり何もしなかったら彼のことが頭を埋め尽くしてしまうので自習を沢山した。するといつの間にか、成績はぐんぐん上がり学校のトップに入るぐらいまでになっていた。

何やってんだと自分自身に笑ってしまう。こんなに勉強をしたのだから、そろそろ趣味でも見つけてみようかな。俺にとってしてて夢中になることは何だろう。

すると再び、北山の姿が脳裏に映って自分の頬を誰にも聞かれないぐらいにそっと叩いた。けれど痛みは全く感じず、脳から彼の姿は消えることはなかった。

自問自答を繰り返してると授業は、あっという間に終わりを告げた。それにずっと考えを巡らせてたせいで、久し振りにノートは真っ白のままだった。

授業をサボってしまった後悔と彼への想いの罪悪感が混ざって、身体がいつもよりとても重く感じる。もう何もかも投げ出してしまいたい。考えるのも手を必死に動かすのも疲れてしまった。

机に腕を置いて、その隙間に顔を埋める。視界は真っ暗になって、まるで自分の心を現しているようだった。こんなにも真っ黒に染まってしまったんだな。

その瞬間、眠気が急に襲ってきて瞼が物凄く重くなった。重力に逆らうことが出来ず、素直に目を伏せた。するとそれを邪魔するかのように肩をつんつんとつつかれた。

顔を渋々上げるとそこには渉がいて、指している先を見るとそこには教室の入り口にちまっと北山が立っていた。