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けれどその土から伸びるように立っている木々の方に小さい神社より心がくすぐられた。細かく言えば、その木に実っている赤い果実の方に目線は絞られていた。
「ねぇ?みつ。今何をおもう?」
意味が分からなかった。主語も修飾語も無い、彼の質問は頭で理解することが出来なかった。咄嗟に酷く魅了されるものから視線を離し、玉ちゃんの顔を覗く。
彼も此方を見ていて強く絡みついた視線につい目を逸らしたくなった。その心情を読み取ったかのように玉ちゃんは俺の頭を両手でホールドすると顔を先程向いていた方に無理矢理向かされた。
「……食べたい、っておもった?」
核心をつくように耳元で甘く囁かれた。背中に寒気が吹いて全身の鳥肌が立つ。怖いのか、それとも興奮しているのか分からないほど真っ白になってしまった脳内には、欲望に染まったような言葉だけが浮かんでいた。
『食べたい』
それだけだった。なんだか自分が闇に落ちているような気がするが、そんなのもうどうでもいい。早く手に納めて口の中に含みたいという欲望だけがぐるぐる回ってて目が回りそうだ。
口を半開きにしていたせいか涎が垂れそうになり、慌てて袖で拭う。玉ちゃんはそんな俺を見て、気持ちがらずにニコッと微笑んだ。
俺の頭を掴んでいた手を離すと早々と木の方に近寄って、優しく実を手で覆い苺を狩るかのようにプチっと引き抜いた。
するとすぐに俺の元に戻って来て、木の実を手の平に乗せ渡してきた。手に取ろうとするとひょいと高く上げられてしまった。
その光景が先程のあいつとリンクして、今まで忘れていたくせにチクリと胸が痛くなる。顔を歪める彼は微笑みよりニヤッとした笑みを浮かべて、木の実を口にほおり投げてしまった。俺はそれを名残惜しそうに目で追うだけで唖然と佇む。
まだ半開きだった自分の口に食いつくように玉ちゃんの唇と俺の唇が重なった。
驚きで本心状態の自分をこちらの世界に引き戻すかのように後頭部を包まれて、完全に逃げることが出来なくなった。それを狙ったかのようにすぐに口の中に入ってきた温かいそれにまた驚く。
「これは俗に言うディープキスなのでは?」そんな余計な事を考えられるほど俺の心の中には余裕が残っていなかった。
その時目の前には至近距離にある彼の睫なはずなのに、とても小さい顔がフラッシュバックする。この記憶は何だろうか。
その考えも彼の反対の手が俺の腰をいやらしくさらってくるせいで、頭の外に投げ出されてしまった。自分は今何されているんだ?という疑問だけが残る。
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作者名:supia | 作成日時:2021年10月19日 21時