おとなりさんとの恋愛事情。-Ki-

期待を抱いて ページ2

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桜が舞うこの季節。



独り暮らしをはじめる決意をした私に、完全オートロックのこのマンションを契約してくれた両親。



一人娘の私になに不自由なく生活させてくれる両親には頭が上がらない。



一時期は反対もあったけれど、最後は私の強い決意を認めてくれて。



がんばれ、って応援してくれる唯一の人達。











「…いってきます」











誰もいない部屋に向かってそう呟いて鍵をかける。



まだ少し肌寒い朝、向かう先はこの春から新入社員として入社した職場。



もうあんな思いはしたくないと選んだのは、男性社員のいない女性下着を扱う会社。



女だけの職場はきっと難しいこともあるかもしれない。



それでもきっと、何かを変えられるはず。



そんな期待を抱いてここにきた。











「ふぅーーーー…」











新人社員はやることが多い。



女性だけの職場は華々しいし、みんなおしゃれな人ばかりでなんとなく気が引ける。



輪の中に入ってみようと試みるも、コミュニケーション知識の無い私には難しいことで。



何度も溜息を付いて終わる日々。











「北山さん北山さん！」


「あ、はい…」


「ねね、合コン行かない！？」


「…合コン、ですか？」


「百合だめだって…、北山さんはそーゆーの無理だよ…」











…普通に聞こえてるんですけど。











きゃっきゃ言いながら去っていく彼女達は、綺麗でかわいい子ばかりで。



勝手に引け目を感じて、勝手に自己嫌悪に落ちて。



あぁ



いつになったら変われるんだろう、って…



デスクに無造作に置かれた書類の束をまとめて、無意識に溜息を吐きながら会社を後にした。






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