アナタの事、好きだけど愛してはいない (ページ30)

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19話苺のアイスページ30

…あぁ、こんな狂った人に絡まれるんだったら四ツ葉に渡された防犯用の唐辛子スプレーを持ち歩くべきだった。過剰防衛だと思ったから部屋の引き出しに仕舞ってある。…今、私の１番欲しい物は唐辛子スプレーとなった。
この男のサングラスを踏み潰して眼球に吹き掛けてやりたい。

…こうなったら過保護(四ツ葉)を呼ぼう。だって怖いし…訳が分からんし、五月蝿いし……グラサンだし。
四ツ葉にSOSを出すためスマホを操作しようとすると…「ダメだよ」とスマホを奪われてしまった。

「返して欲しかったら僕に付き合ってよ、A？」
「…なっ、何で私の名前…」
「君が教えたんじゃない。さぁ、行こうか」

男は私の手を握り、そのまま歩き出す。
…スマホの中には四ツ葉の電話番号や“あの家”の電話番号が入っている。こんな狂った男に知られたら…。…そう思うだけで、ゾッとする。
でも、こんな不審者に何処へ連れていかれるんだろう…？ ……ヤバい…危ない場所しか想像できない…。
あぁ…通行人の方達よ。どうか私に唐辛子スプレーを投げ込んで来ておくれ…。

…しかし、連れて行かれたのは、至って普通のコンビニだった。
…いや良かったけど。 …いやいや何で…？
男は何やら買い物をしている様で私は外で待っている。
畜生、スマホさえこの手に有れば直ぐにでも逃げるか、四ツ葉と警察を呼ぶのに。

…数分後、男は店から出て来た。
「お待たせー」とコンビニの袋を探り始めるが…何一つ待っていない。だからとっととスマホ返して。そして帰らせて。
しかし、男は「ねぇねぇA？」と私を呼ぶ。「何ですか」と塩対応で応答してやった。

「Aは苺のアイス好き？」
「…？はい、好きですけど…」
「そっか…変わってないね。
じゃあはい…コレ」

ぽんっと手の平に置かれたのは苺味のダッツ。
アイス？苺の？
…あれ…？こんな事…前にも合ったような…

『Aって言うんだね。Aは苺のアイス好き？』
『うん、好きっ。でも…お兄さん…
“ふほーしんにゅー” だからね。けーさつさん来たら捕まるのお兄さんだからねっ』
『あはっ。君は可愛い顔をして可愛くない事を言うね。
……そうだね…全て終わったら“迎え”に来てあげるよ、A…』
『…迎えに？』

…この記憶…あの夏の日の…。
…じゃあ…この人は…

「昔、家のベランダに不法侵入した人…！」

「えっ…？何その思い出し方…。
本当に君は可愛い顔をして可愛くない事を言うよね」