アナタの事、好きだけど愛してはいない (ページ33)

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21話裏方少女が恐れている事ページ33

…フワっと香る洗剤の香りがして私は目を覚ました。…今はもう6時…。って事は…

…寝ちゃったんかい…ベランダで…。

何処でも寝れるけどベランダで寝たのは初めてだよ。
…今はリビングのソファーまで移動し、私は四ツ葉のパーカーを羽織って寝ていた。洗剤の香りはコレか。良かった昨日の血の臭いが退いて。起き上がりソファーに座る。
…すると…ガチャと、リビングのドアが開く。其所には呆れ顔をした四ツ葉が「やっと起きた」と溜息を吐いていた。

「ベランダなんかで寝るな。この不良学生が」
「ふ、不良…？」
「不良だろうが。頭痛と腹痛と腰痛がすると嘘を言って学校早退。そんでダッツ食べてベランダで寝る。学生は学業優先しなさい」

四ツ葉は腕組みをして私に言い聞かせるように説教する…己は私のオカンか。
まぁでも…言い返えせないんだけどね、畜生。

「腹が痛いって言ったんだったらアイス食うなよ…。全く…アイス位、俺が作ってやるのに」

むすっとした顔で呟く。
…本当に作れるんだもんな四ツ葉は。
ハイスペックかよ、スゲェ。

…そうだった、四ツ葉は何故か私に自分が作った物以外あんまり食べて欲しくないんだった。

「ゴメン。でも…四ツ葉の作るアイスの方が好きだよ？」
「…。…ダッツは高級アイスでも？」
「ダッツは高級アイスでも」
「そう…」

拗ねた顔から一気に自慢気な顔へと変わった。
…そう言う所、可愛いよね。

…私は四ツ葉に小さく手招きをして「来て」と呼ぶ。四ツ葉は「何？」と近付いてくれた。
…私はそんな彼に思いきり抱き付いた。

「…！おっと…危ない。…何？ Aから抱き付くの珍しい…」

思いきりが良すぎてソファーから落ちそうになる私を抱き止めてくれた。彼は少し驚いていたが「A…何か有ったのか？」と優しく問いかけてくれた。

「ちょっとね…昔の事、思い出して…」
「…あー…そう言う事…」
「うん。だから…少しだけ…」

私は四ツ葉に強く抱きつく。
四ツ葉は「好きなだけ良いよ」と微笑みながら抱き締め返してくれた。

…私は彼が存在する事を体で感じたい気分なのだ。“私と一緒にいてくれる人は夢では無い”と信じる為に。

…大丈夫、大丈夫だ。
このジワリジワリ…と広がる温かい体温も…抱き締めてくれる力強い腕も…洗剤が香る洗い立ての服も…全て現実なのだ。夢では無い。
もう“あの日々”は終わったのだ。

…でもまぁ、私は何時も…この大好きな日常が壊れて仕舞う事を恐れている。