【ツイステ】夕焼けの草原王宮物語Ⅱ (ページ9)

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73話相談ラバーズ！ページ9

抱きしめたかった。
本当は、自分以外の男の為に頑張らないで欲しかった。
でも、そんなことを願うのは、祈るのはいけないことだって、知っているから。

チェカは、王になるべく産まれた男だから。
個人の感情よりも優先するものがあると、今なら分かるから。

夕焼けの草原王位継承権第一位のチェカ(今の自分)ではない、ただのチェカ(違う自分)であったならどうなっていたんだろう。何度も考えた。想像した。

「…でもそれじゃあ、きっとAさんの視界にすら映らなかった」

あの可愛くて強い兎の獣人は、本当に国のことしか頭にないのは知ってるから｡
だからこそ、絶対に叔父を助けてくれると信じ､送り出したのだ｡
信じてるから、そこに変な意味は無い｡
でも実際走り去るAを見るのは、何度見てもキツい。
きっと自分はこの辛い思いを何度もするのだろう。

でも、だからと言って、簡単に諦められるような思いを持っている訳では無い。

今は、叔父に貸しているだけ。

そう思って、自分を奮い立たせるしか無かった。

「…さて｡それで？君は僕に何か話でもあるのかな？」

そう言ったチェカの背後から出てきたのは､シベリアンハスキーの獣人｡……彼がAの言っていた共犯者なのだろう｡

(僕は王だ。この草原の王になる男だ。
──恋だ愛だは、今はまだ二の次でいい)

そう結論づけ、チェカはシベリアンハスキーの獣人に手を差し伸べた。