サマーバケーション (ページ10)

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改札を出ると、目の前はもうビルの入り口になっていた。

昨日調べたんだけど、
水族館の他にもプラネタリウムだったり、キャラクターのカフェだったり、色々入っているらしい。

その複雑なフロアマップの横。
いつもと違う装いの店長がいた。

片手をポケットへつっこみ、もう片方の手でスマホをいじっている。
まだ、私が来たことには気付いていない。

店長って、こういうときなにして暇を潰しているんだろう。

いつもカフェでは料理作ってるかお客さんと喋ってるかだから、
こういう店長を見るのは新鮮だった。

スマホから外された視線が、私を捉える。

「おはよ」

『おはようございます…』

もう少しだけ離れたところから店長を眺めていたかったけれど、気付かれてしまったものはしょうがない。

軽く会釈をしながら駆け寄ると、
店長は画面をさっと身体の方へ寄せて、優しく微笑んだ。

「スカートかわいいね。初めて見たかも」
『あったしかに、普段はジーンズだから』

そう呟いてから "かわいい" という言葉をスルーしてしまったことに気がついたけど、
今更どうすることもできない。

「じゃ、行こっか」

ゆったりと歩きだす店長を追いかけて、
水族館へ。