あつい 【北信介】

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さ、勉強しよか

と北さんの一言から
はや30分ほど。



もちろん、集中できるわけもなく。


数学の問題を同じところを解いては消して、
を繰り返している。

…時々、北さんのことを見ながら。




北さんは勉強に向かう姿勢もまるで模範で、

シャーペンの持ち方
背筋
解いていくスピード

真剣な表情にも見惚れてしまう。



見ていること、バレませんように。









「あ、
…佐々木さん、消しゴム借りてもええ？」



「は、はい！
どうぞ、」









急に北さんに話しかけられ、びっくりした。

さっきまで北さんが使っていた消しゴムは
北さんの足元に。




自分の消しゴムを取り、
差し出された北さんの手のひらに置く。



北さんの綺麗な手の上にある消しゴムが
毎日自分が使っているものなのに
こんなにボロボロだったっけ？、と思うほど
汚く感じてしまって、

好きな人に貸す日が来るならば
もっと日頃から丁寧に使っておけばよかったな、なんて。








「ありがとう、使わせてもらうわ

………佐々木さん
あと1時間、勉強頑張ろか」



「……い、1時間ですか？」








消しゴムでノートに連なる文字を消しながら
周りに聞こえないように小さな声で
話しかけられる。



今は17時を過ぎたころ。
まだまだ外は、明るい。

太陽が照っている。



……でも次の北さんの一言で、
私の体は太陽よりも暑くなる。









「そしたら、一緒に勉強のご褒美
食べて帰ろう」








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