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F*
俺たちが中学生の頃だった
あの暑い夏の日
Aのお母さんが
交通事故でこの世を去った
身近な人が亡くなるということが
初めてで
俺は酷くショックを受けた
Aは俺とは比べ物にならないくらいの
哀しみだったはずだ
だけどAは
人前で泣くこともなく
気丈に振る舞っていた
2ヶ月近くが経とうとしていたある日
小さい頃から数日に一回は
ふらっと俺の家に来ていたAが
一週間以上来なくて
気になってAの家に行った
昔からいる
優しいお手伝いのお婆さんが
迎えてくれる
Aの部屋に入るのは
たぶん1ヶ月ぶりくらいだったけど
いつもと家の雰囲気が違うからか
すごく久しぶりに感じた
窓辺に座って外を眺めながら
「……お母さん、死んじゃった」
と消えそうな声で呟いたAが
やけに小さく思えて
抱きしめた
ふっ、と力が抜け
腕の中で泣き出したA
そんなAを見て
"これからは俺が守らないと"
と、幼いながら確かにそう思った
*
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作者名:ゆう | 作成日時:2019年1月18日 19時