夢と現実 2 ☆ ページ26
会話が途切れ、なにか考え事をし始めたのか一点を見つめて動かなくなった。
私はあまり気にせず、止まっていた手を動かし論文を書き進める。
「俺、デビューできるんですかね」
数分後、藤ヶ谷くんはぽろっと独り言のような小さな声を発した。
「え?」
「この世界に入って、結構経つんですよ、俺。でも未だにデビューできなくて、後輩にも先越されて、正直、焦ってます」
顔はこっちを向いているけど、目線はずっと下のまま。一度も目が合わない
黙って聞いていると、藤ヶ谷くんはまた口を開く
「校内歩いてると俺のこと知ってる人結構居て、振り向かれるんです。でも同時に、あの子まだデビューできないらしよって噂されて…まあその通りなんですけどね」
苦笑いをする藤ヶ谷くん。その顔はあまりにも辛そうで見てられないほどだった
「友達も何人かいるんですけど、就活の話とかになると、なんか気まずくて。お前、まだ続けるつもりかよ。とか、いい加減現実みて、就活のこと考えたら?とか思ってそうで。考えすぎかもしれないですけど。…でも夢はまだ諦めたくねぇし……、だから学校に来たらここに来るんです。ここは誰のことも気にならないし、落ち着く。」
この部屋を見渡して微笑む。
その後ようやく私と目が合い、ハッとしたのか目を丸くした
「俺…なんで先輩にこんなこと、すいません。忘れてください」
今日ほぼ初めて会話した私が聞いていい話だったんだろうか
戸惑いながらも、彼の漏らした心の声をそのまま受け流すこともできずにいる
ギラギラした格好して、見た目も派手。でも礼儀正しくて、ほとんど話したことのない同じゼミってだけの私の名前を覚えててくれた。
まだ数分しか経ってないし、ほんのちょっとしか彼のことを知らないけど、きっとこの人はすごく心の暖かい人だ。
そして藤ヶ谷くんはいろんなものを背負って、今ここにいるんだな…
彼の痛みや辛さを全部分かるわけもなく、言葉もかけられない。けど、こうやってたまたまここにいただけの私に自分のことを話したってことは、それだけ彼は追い詰められていたんだろう。
私はこのまま彼を放っておくことができなかった。
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美紀 - キスマイ前列寄りのオール担当です最高です (2019年4月1日 18時) (レス) id: a31ea93868 (このIDを非表示/違反報告)
架凜 - こんばんは(*^^*) はじめまして。 夜遅くにいきなりすみません...。 物語読んでいて思ったのですが...。 物語行間隔あけたほうが良いのではないでしょうか? 行間隔が詰まっていると読みにくいので...。 (2018年5月8日 1時) (レス) id: fa78cdaff1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:peach | 作成日時:2017年9月4日 11時