恋におちたら

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「……俺、ホントはね。特に強い希望とかなくってたまたま受かってこの会社入っちゃって。

…甘いもんとか苦手なのに(笑)。」




「そうなんですか？(笑)」



「…でもさー、
新人研修の時、商品開発の苦労聞いたり工場でうちの商品作られてるのとか見ただろ？

一個の商品にこんだけの人が係わってんだなーって知ったら、もっとたくさんの人に食べてもらいたいな〜って思っちゃって。


ちょっと頑張ろって思えて。

俺って単純だから(笑)」




ずっと、二階堂さんはもともと人とコミュニケーションとるのが上手い人なんだとばかり思ってた。


でもそうじゃなくって、真面目で努力してる人なんだなぁって気付かされる。






ちょっとの不安で、仕事に対して逃げ腰になってる自分が恥ずかしい。






「だってさ〜、スーパーとかでちっちゃい子がうちのお菓子、嬉しそうに買ってもらってんのとか見ると、フツーにこっちも嬉しくならない？」




ちょうど、信号待ちのタイミングで停車中。

そう言って、二階堂さんがこっち見てクシャって笑った。






……その瞬間、私はたぶん、









恋に落ちた。







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それからは、今までよりもう少し積極的に頑張ろうって思えるようになって。

忙しい毎日だけど、それなりに充実感も得られるようになってきた。




そして、
前よりも二階堂さんのことを意識してしまう自分がいる。





移動の営業車は、当たり前だけど二人っきりで。





ちらっと見る右側。


移動中よく飲んでる缶コーヒーはブラック。



ハンドルを持つ手は、男の人にしては指が長くてしなやかで綺麗。


いつも運転中ワイシャツの袖をまくっていて、スラっと伸びる腕は長くってちょっとだけ焼けていて、細いのに浮き出た血管が男っぽい。



違う意味でなんか一人でドキドキする。






あ〜ダメダメ私。



………仕事仕事。





そんな不純な動機も手伝ってか、確実に以前より前向きに仕事に向かえてる自分(笑)。






そんな時、事件は起こった。

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