INNOCENT DAYS ３

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前向きになれない私の気持ちを察したのか、田中さんが私の言葉を遮る。




「これからの白石さんの生活は、今よりずっと楽になるはずです。」



「え、、、？」



「失礼ですが、まだ奨学金の返済が残っていることも調べさせていただきました。地方公務員のお父様と、医学部に通う弟さん、、、皆さんがこれからの生活に困らない程度には、ご提案させていただいております。」



「・・・・・・。」




どこまで自分のことを調べられているんだろう…って、一瞬高嗣の顔が浮かんできて少し不安になる。



でも確かに………言われた通りにページをめくると、提示されている契約金は桁違いで。



残っている奨学金を全額支払っても、ありえなくらい十分すぎる金額が書かれていて、目を疑う。



「我々もぜひ、今後力を入れて育てたいと考えています。ですから、今の仕事はもちろんやめていただかなくてはなりませんし、住まいもこちらで用意させていただきます。」




「・・・・・・。」




「今すぐに返事をして欲しいとは言いません。次回、またぜひプロデューサーを交えてお話をさせていただきたい。」









「はい、、、わかりました。」









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自宅に戻って、もう一度頂いた企画書に目を通す。






有無を言わさず押し切られるように、次回の約束をしてしまったけど、、、本当はどうしていいのかわからない。



こういう業界のことにも詳しい木崎さんにすぐに相談したかったけど、彼は今…念願だったヨーロッパへの演奏旅行に出かけていて、まだあと1ヶ月は戻ってこない。



私がコンクールの決勝に進んだことで、自分の予定を遅らせてくれていたのに、、、さらにわざわざ海外にまで連絡を取って相談なんて……これ以上私のことで迷惑をかけるわけにもいかない。



今のスクールの仕事に関わることでもあるし、ちゃんと自分で考えて答えを出さないと。



実際、クラシック界のアイドルを目指す…だなんて、ちょっと目指す世界が違いすぎてあまり乗り気にはなれないのだけど、提示された契約金の金額に、、、実家の父と弟の顔を思い浮かべてしまう。



今まで散々好きなようにやらせてもらって、迷惑ばかりかけてきた恩返しが、もしかしたらできるのかもしれない………そう思うと。







クラシックのことだから高嗣にも聞けないけど、大手のレコード会社だし何か知ってることもあるかな？



次に会えた時、、、相談してみようかな。




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