INNOCENT DAYS ３

＊98 ページ1

.



冬の空は空気が澄んでいて、青さの中に透明感を感じる。



窓際に降り注ぐ太陽の光が、ほんわかと陽だまりを作り出して、その暖かさに移動の車内ではちょっとウトウトして、なんだか優しい夢を見ていた気がする。




私は年末年始を過ごすため、大みそかに実家に帰った。


夏に帰ったばかりだったのに、これまでより短いスパンでの帰省に「ねーちゃん、彼氏となんかあった？(笑)」って、弟に無駄な心配もされたけど。



夏の帰省で喜んでくれた父の笑顔を思うと、顔を見せるだけでも少しは親孝行になるのかな？って思って。



今まで心配ばかりかけてきちゃった家族にも、高嗣と出逢ってからちょっと素直になれた気がする。







そして夜にはテレビを見ながら、たまには…って言って父と弟と3人で日本酒を酌み交わしたり、年越しそばを食べたり。


こんな過ごし方をできるようになって私も弟も大人になったんだなぁ、、なんて感じる。



実家に帰ればそこかしこに感じる母の面影に、母が生きていたら…って思わずにはいられないけど。


母が亡くなってから、医療の道を志した弟。


昔から優しい子で、、、父を一人にすることなく普段この家で一緒に過ごしてくれてることに感謝しかない。




そんな穏やかな気持ちで迎える年の瀬。







夜も更けて、父は早めに就寝。



弟も自分の部屋に戻ったから、片付けを済ませてリビングで1人……高嗣たちが出るカウントダウンのテレビを見始めた。






次々に登場するキラキラのアイドル……煌びやかな世界。



たくさんの出演者の中に、高嗣を見つけると嬉しくなる。



画面の中で、いっぱいの笑顔を見せて歌い踊る彼にはどこかまだ慣れないけど……やっぱりカッコよくて、ドキドキする。


動きのひとつひとつが綺麗なダンスは、大勢の中にいても高嗣だってすぐにわかる。






いつの間にか夢中で見てたら、途中で部屋から出てきた弟が


「え、ねーちゃん珍しいの見てるね。趣味変わった？」


なんて、笑われた。



「そ、そうかな？あ……まあ、友達の影響かも。」


「ふ〜ん。」



ホントは、大して興味なさそうな返事。



前にバッタリ、私のマンション前で会った彼が、このテレビに出てる…なんてまさか気付くはずないけど、、、何だか緊張しちゃう。






そして、ちょうど迎えたカウントダウンの時刻。





チラリと映る高嗣の笑顔……。




楽しそうにしてるけど、どこか淋しげに見えるのは私の考えすぎ？



.

＊99→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す