空から降るラブソング

＊27〜back in time ページ27

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ここに帰って来たのは、いつもの優しいお兄ちゃんだった。



「ねえ、今日ホントびっくりしたよ！デビューだなんて、聞いてない！！」



………結局、お兄ちゃんがシャワーしてベットに入るまで、私もずっと起きてて。



今、お兄ちゃんを質問攻め(笑)



「フフ…びっくりした？Aを驚かせたくて。黙ってたんだ」



………そうなの？！



「父さんや母さんにはもう報告してある」



「もう！お母さんだって、ひと言も言ってなかったよ、そんなこと」



「だってAには黙ってて、って俺が頼んだから」



ちょっと意地悪く、楽しそうに笑ってる。



「ひどい！私だって早く聞きたかったのに。



「ごめんごめん。でも、サプライズ感あっただろ？」








確かに。




きっと…………今日の光景を私は一生忘れない。









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それからデビューまでは、あっという間だった。



お兄ちゃんは、事務所が用意した今までよりも広い部屋に引っ越して、今までよりもっと忙しくなって、今までよりもっと会えなくなった。



大学もしばらく休学して、音楽活動に専念するみたい。



でも、それから何回かライブへは招待してくれて、チケット入手困難って言われたアマチュア最後のラストライブも、デビューツアーも見に行くことができた。



デビュー曲がいきなりヒットして、音楽雑誌に特集されたり、テレビの歌番組にも出るようになった。



お母さんが買ってきた雑誌や、録画した番組を一緒に何回も繰り返し見たり。



そこにいる“太輔”は、やっぱりいつも知らない人みたいだったけど、お母さんはポラリスの活躍をすごく喜んでいて、離婚のストレスで崩しがちだった体調も良くなって、前より笑顔が増えたことが私も嬉しかった。








「Aはお兄ちゃん大好きだったから、太輔があんなに人気が出て、あんまり会えなくなって寂しくない？」



ある時お母さんが、ちょっと私の事をからかうように聞いてきた。



「そんな事ないもん」



「女の子にもキャーキャー言われて、、、もっとヤキモチ焼くかと思ったけど、そうでもないのねぇ(笑)」



そう言われて、ドキッとする。



自他ともに認めるブラコンで、あんなにお兄ちゃんが大好きだったのに。



なんだかお兄ちゃんが遠くに行ってしまったみたいで、寂しいって気持ちは本当。



だけど、、、お母さんは気が付いてないけど、それだけじゃない感情が私の中に湧きあがってた。




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