空から降るラブソング

＊17〜back in time ページ17

.



「Aは思春期真っ只中で、いろいろデリケートなお年頃だろ？(笑)」



わざとふざけてからかう様に言うけど、私が新しい環境でいじめられたり不登校になったりしていないか、心配してくれるお兄ちゃん。



別々の生活になっても、ホントはやっぱり優しい。



新しい友達も出来て学校には楽しく通ってるし、中学生にもなればオトナの事情だって少しずつ理解する。



両親の離婚で道を外したりする程、コドモじゃないんだから、私は。



だからかな？もう、、、昔みたいに無邪気に同じ布団に潜り込む事は出来ない。



もしかしたら、今私は……急速に大人への階段を上ってるのかもしれない。









こんな風に頻繁に会いに来てくれてたから、逆に東京のお兄ちゃんちに行く機会がなかなかなかった。



でも本当は気になる、お兄ちゃんの新しい生活。



どんな場所で暮らして、どんな大学生活を送ってるんだろう。



唯一高校時代からやっていた音楽に、知り合いに誘われて本格的に取り組んでることだけは知ってる。



高校の文化祭の発表を見に行ったことはある。



あの頃、お兄ちゃんはギターとボーカル。



かなり人気があった。



お兄ちゃんは、自分がモテてるって自覚はゼロだったけど、女子にキャーキャー言われてるのを見るのは、妹としては誇らしいような心配なような悔しいような、、、複雑な気持ち。



だけど、お兄ちゃんの歌声を聞けるのがいつもすごく楽しみだった。






今のバンドはどんな感じなんだろ。



相変わらずモテるのかな？



………カノジョはいるのかな？



東京での大学生活なんて、ドラマの世界みたい。



中学生になってもまだ東京に行ったことがない私には、いろいろが想像し難い現実。



「遊びに行ってもいい？」


「今、バイト忙しい」


「東京に行ってみたい！」


「ああ、そのうちな」




何度もこんな会話を繰り返し、とうとう中2の夏休みにお兄ちゃんに会いに行けることになった。






.






初めての東京。



高速バスを降りると、ターミナルまでもう迎えに来てくれてた。



相変わらず、久しぶりにお兄ちゃんの顔を見ると、何だか意識してしまって照れくさいけど。



「お腹すいただろ？」


「うん！」



他愛もない会話をすれば、いつもの兄と妹。



そのまま荷物をコインロッカーに入れて、渋谷や原宿を案内してくれた。



竹下通りは、地元のお祭りかと思うようなものすごい人。



迷子になりそう！



.

＊18〜back in time→←＊16

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す