空から降るラブソング

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スタジオに響くシャッター音。



眩しいフラッシュ。



カメラマンの要請に応じて、次々に表情を変えていく玉森さんは、さっきまで控室で眠そうにしていた玉森さんとは別人で。



「じゃあ、今度はギターを持って、、、」



ケースから出して準備してたギターを、急いで玉森さんに渡す。



撮影に使用するギターは、本人の要望で、、私物。



最近は別の撮影現場へもこのギターを肌身離さず持って行き、待ち時間にずっと練習しているらしい。



少しでもギタリストらしく、ギターと自分が馴染む様に、、って。



実際の映画では、演奏するシーンの手元のアップは別の人の演奏に差し替えられるらしいのに、玉森さんのプロ意識の高さに驚かされる。



ストラップを肩にかけ、ギターを持つとさすがサマになってる。



「ロックな感じで」って指示されて、演奏するポーズはクールで美しくて。



「そのまま、ジャンプしてー」って言われて、何度もギターを持ったまま飛び上がる。



「もっと高く」「ちょっと笑顔」「視線ちょうだい」「ネックをもっと上にあげて」って、細かい指示に答えていく。



その集中力に圧倒される。



撮影はソロカットの他に、主要キャスト全員のものや、バンドメンバーでのものなど、衣装やメイクを変えながら、ほぼ一日がかりで行われた。



その合間には、雑誌の取材も入っていて。



ハードなスケジュールだったけど、玉森さんは笑顔を絶やさず一日を終えた。







帰りの車を運転するのは、森川さん。



私は助手席に。



今後増える、撮影所と玉森さんのマンションとの往復。



これからは私も運転しなきゃいけないから、渋滞を回避しやすい道を森川さんに教えてもらいながら、ナビと実際の道を見ながらその道順を覚え込む。



運転は出来るけど慣れない大きな車だし、大事なタレントさんを乗せるから緊張する。



後部座席の玉森さんはさっきまでスマホを見てたけど、いつの間にかぐっすり寝てる。



「疲れたんじゃないかな、初めての現場で。玉森人見知りだし」



「そうなんですか」







森川さんの選んだルートは渋滞することもなく、スムーズに玉森さんちに到着する。



「玉森さん、着きました」



スイッチがオフになった玉森さんは、また眠そうに「おつかれー」って言いながらエントランスで車を降りる。



その間際「Aちゃんも、おつかれ」って小さく聞こえた。



名前、、、本当は覚えてくれてたみたい。



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