空から降るラブソング

＊9〜back in time ページ9

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藤ヶ谷太輔は……6コ上の私の兄。



幼い頃から少し年の離れた妹の私を、とても可愛がってくれた。



共働きの両親は留守がちだったけど、お兄ちゃんがいたから寂しくなかった。



優しくて、でも時々からかわれてイジワルで、、だけどやっぱり優しくて。



おままごともお人形ごっごも付き合ってくれたし、公園にも遊びに連れて行ってくれた。



なわとびも逆上がりも教えてくれた。



友達と遊びに行くお兄ちゃんに「ついてくんな」って言われても一緒にいたくて泣いて困らせた。



転んで膝を怪我した時には、本当は歩けるのに大袈裟に「痛い」ってアピールすれば「Aはしょうがないなぁ」って笑って、家までおんぶしてくれた。



華奢なのに、私にはその背中が広くて逞しくて。



熱が出た時も、仕事で不在の両親より先に私の体調の異変に気付いてくれて。



冷えピタ貼って、薬とポカリを飲ませて寝かしつけてくれた。



子供の私から見たら、いつだって妹を守ってくれる優しくて頼れるスーパーヒーローみたいな存在だった。



私が小学生の頃、お兄ちゃんは毎年バレンタインにはたくさんのチョコをもらってたし、中学校の卒業式の後には帰宅するとボタンが全然ついてなかったし、すごくモテるんだということに気付いた。



周りの友達には「Aちゃんのお兄ちゃん、カッコ良くて羨ましい」ってよく言われた。



そんな兄を持った妹が、ブラコンに成長するのは当然といえば当然の流れ。



眠れない夜は、わがままを言ってお兄ちゃんのベットに潜り込んだ。



ギュってしがみつけば、安心して。



お風呂上がりのお兄ちゃんは、私と同じ石鹸の匂い。



「お兄ちゃん大好き」



「はいはい」



「ホントだよ」



「うん、知ってる」



「ねえ、お兄ちゃんカノジョいるの？」



「フフ……さあね？そんな事ばっかり言ってないで、おこちゃまは早く寝なさい」



「すぐ子供扱いする」



「だって子供じゃん」



6つの歳の差は、大きくて。



私にとって、お兄ちゃんはいつまでも追いつけないトクベツな存在。





たぶん…………私の初恋はお兄ちゃんだったのかも。





「ずっとそばにいてね」



「うん。そばにいるよ」



目が合うと、お兄ちゃんの手がふわりと私の髪を撫でる。



「どこにも行かないでね」



「どこにも行かない、だから早く寝なさい。ほら……目閉じて」



今度はまぶたを優しく撫でられると、そのままスッーと眠りに落ちた。



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