INNOCENT DAYS

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広い会場に、いくつもの光が瞬く。



１人ずつの名前と映像が映る度に上がる歓声。



そして…



メンバーが登場すると、その歓声は一層大きくなって悲鳴にも似た叫び声になる。









二階堂君の真剣な表情。



クールなまなざし。



そして、笑顔。



ハスキーな歌声とラップ。



しなやかだけど、切れのあるダンス。






そこは、私の知らない世界で。



そして、見たことのない二階堂君がいた。






これが二階堂君の住んでる世界なんだ。



それがどういうことなのか、



わかってるつもりで、私…全然わかっていなかった。






夢の世界のようなライブ会場と突き付けられた現実。



歌って踊る彼は、まぎれもないアイドルで。



………どれ程の人が、彼らに恋してるのかを知った。



夢の世界が終わって画面が暗くなっても、しばらく放心状態みたいになって動くことが出来なかった。









いつの間にか、窓の外は真っ暗で。



今、何時なのかもわからなくなっていて。



カーテンを閉めて、部屋の灯りをつけると浮かび上がる私の平凡な日常。





………迷子の子犬みたいって思った、出逢った日の二階堂君。



………再会して、大人になって、私のことをドキドキさせる二階堂君。




彼の屈託なく笑う顔が浮かぶ。





決して軽はずみな気持ちではなかったけど、やっぱり送ってもらったり…まして車の助手席になんて乗ってはいけなかったなって思い返す。




私みたいな普通の人間が簡単に踏み込めるような場所じゃなかった。



なんだか頭の片隅では、客観的にこの状況を見てる私が考えてる。





………大丈夫。




今ならまだ、戻れる。



引き受けた仕事も、明日で終わる。




ぼんやりしてたらスマホが震えて、我に返る。




メッセージが入ってる。



このタイミングで、相手は………二階堂君。




開いていいものか迷ったけど、ずっと無視する訳にもいかないんだし………しばらく考えてからタップして、メッセージを確認する。




“おつかれさま！”

“今日もありがとう!!”

“今、少しだけ待ち時間。”

“明日は………ぜったい緊張すると思うけど。”

“おれ頑張るから！”




短い言葉たちが続くメッセージ。



そして、最後に何だか変なキャラクターのスタンプ。



こんなタイミングなのに、メッセージもやっぱりどこか二階堂君らしくて。



ほっこりして、あったかくなってしまいそうな自分の心を必死に抑える。




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