INNOCENT DAYS

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セッションだから、一番大事なのは呼吸を合わせること。



そこはさすがベテランの歌い手さんらしく、緊張してる二階堂君をうまくリードしてくれて、間違えやすい個所を何度も確認したり、タイミングを合わせる練習をしてリハを終えた。




歌い手さんが控室に戻った後、もう一度少しだけ二階堂君と復習をする。



もう落ち着いてさえいれば、間違えずに一通りを弾けるまでに成長してる。



真剣な表情で少したどたどしく弾く姿は、どこか愛らしくもある。



なのに二階堂君の長い指と綺麗な手を見て、不意に昨日の夜のことを思い出して急にドキドキしたり。




何なの、私………情緒不安定？






決められた時間は短いから、あっという間にリハを終えた。



私が二階堂君に出来る事は、ここまで。



「ありがとうございました。」



二階堂君が私の顔を見て、ニコって笑った。



まだ二階堂君は他のリハーサルがあるし、合間に雑誌の取材なんかがあったりするらしい。



ホントにアイドルって、分刻みで忙しいんだなあ…。



自分の仕事を終えた私は、二階堂君とマネージャーさん、それからスタッフさん達に挨拶をして迷路のようなテレビ局を後にした。









まだ寒い季節だけど、今日はいい天気でぽかぽかと太陽が温かい。



明日までは他の仕事も休んでるから、午後ぽっかりと時間が空いてる。



冬の澄んだ空気と青い空を、こんなにもゆったりした気持ちで味わえるなんて、ちょっと贅沢。






ふと、駅ビルのCDショップで足が止まる。



時間もあるし、二階堂君たちのグループの他の曲も聞いてみたいなって思って。



普段は足を踏み入れたことのない、アイドルのコーナー…。



そこには可愛い女の子たちの集団が賑やかに話をしていて、何だか恥ずかしくて近寄れない。



クラシックのコーナーをウロウロしながら、彼女たちが去ったのを確認してドキドキしながら近付く。



どこにあるんだろう………。



でも探す間もなく目に飛び込んできた、彼らのグループ名が大きく書かれたポップ。



ポスターが飾られコーナー化された棚には、どうやら発売されてまだ間もないらしいライブのDVDが並んでる。



自分で驚く程、迷うことなくそれを手にしてまっすぐにレジに向かう私。



“どんな表情で歌ってるのかな”



そう思ったら、何だか自分の気持ちを止められなくて。







彼のことをもっと知りたいって思ってる自分に……気付かないふりしてたのに。



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