INNOCENT DAYS

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つい昨日登録したばかりの名前を見ただけで、どうしてかドキドキうるさい心臓。



小さく息を吐き出して、通話ボタンをタップする。



「…もしもし」



「もしもし……………Aちゃん？」



「あ…はい、うん。」



「フフ……こんばんは。」



「こんばんは。ふふ。」



何となくぎこちなくて、お互いによそよそしい挨拶にちょっと笑ってしまう。




「遅い時間にゴメンね。」



「ううん、大丈夫………何か、あった？わからないとことか？」



「あ………うん。今、練習してたんだけど…なんか煮詰まってきちゃったから………ていうか、明日の変更の件ありがと。」



「え、そんなこと…全然大丈夫。」



「Aちゃんも、予定変更してくれたって聞いたし。ゴメンね。」



「そんなこと………二階堂君が悪いわけじゃないよ、お仕事なんだもん。」





明日のレッスンの予定が、二階堂君の仕事のスケジュールの都合で昼から夜に変更になった。



うちのリハスタが押さえられなくてバタバタして、結局二階堂君の事務所の手配でテレビ局のリハーサルスタジオで練習することに。



さらに私は、夜はラウンジのシフト予定だったけど、急遽お願いして変更してもらうことにした。



明後日はもう収録前日リハーサルの日で、マンツーマンで練習できるのは明日だけだから。




二階堂君の頑張りを、できる限り応援したいと思う。




「ね………Aちゃんは、今何してたの？」



「え、私？」




ハスキーな二階堂君の声。



遅い時間でもうスイッチがオフになってるのか、より低くぼそぼそと甘えたように喋る声が耳元でくすぐったい。



“今何してた？”なんて、聞き様によっては付き合いたてのカップルの会話みたいだけど、きっと二階堂君に他意はない。




「今ね、ちょうど二階堂君達のCD…聴いてました(笑)」



「え、そうなの？なんか………ちょっとハズイ。」



「フフ……でも、二階堂君の声はわからなかったけど(笑)」



「ひっで。俺だって、ちゃんと歌ってるし。」



「ゴメンね(笑)、冗談。


あのね、最初に聞いた曲がすごく素敵で………夜ご飯食べるのも忘れて、そればっかりリピートして聞いてたから、今違う曲も聞いてみよって思ってたところ。」



「そうなんだ。てか、だったら早く夜ご飯食べて。」



「フフ。そうだね、そうする。」



それから、もう少しだけ他愛もない話をして電話を切った。








まだ、ドキドキしてる。



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