INNOCENT DAYS

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切り取られた静止画みたいに、その瞬間の映像が脳裏に焼き付く。


あまりに見すぎて、その人が視線を感じ取ったのか、ふとこちらを向く。


“ヤバい、見過ぎた///………？”


慌てて、何事もなかったかのように正面に向き直る。




ん？



今度は、その人がじっとこっちを見てるような気がする。



ふと気が付けば俺、マスクも眼鏡も何もしていない。



え………？



まさか、俺がオレだって気付かれたわけじゃないよね。




残念ながら、滅多に街なかで声を掛けられることなんてないし。



だからって、時々は「ファンです。」って子に握手を求められることだって一応はあるから、、もしかして？




………まだ見てる？



気付かれたのかな？



さっきまで泣いてたし、俺、今ちょーブサイクな顔してんのにヤバくない？





バックから、サングラスを出そうとして、ハッと気づく。



……何にも持ってないじゃん。




ぼんやりレッスン場から出てきて、カバンごと置いてきちゃったみたい。




誰か、メンバーに連絡しなきゃ。


………って、ケータイもカバンの中じゃん。


相変わらずアホだな、俺。





そんなことを考えてるうちに、その人は立ち上がってこちらに向かって歩いてくる。



出来るだけ顔を見られないようにちょっと俯いて、通り過ぎんのを待つ。



夕陽に照らされて伸びる影が近付いて、俺の近くで止まった。




“ヤバい、やっぱ気付かれた？”



一瞬ドキリとしたけど、結局またその人は歩き出して、俺は声を掛けられることもなく近くを通り過ぎようとした。




白い長めのスカートと細い足首、そして華奢なサンダルが視界の端っこに入る。



思わずそっと顔をあげてその姿を確認する。




半袖の、淡いピンク色のシャツ。



すらりと伸びる白い腕。



肩にかけた大き目のトートバック。



夕陽色に染まったゆるい巻き髪が、歩くテンポに合わせてやさしく揺れる。



そして、大きな瞳と凛とした横顔がキレイで。



さっき涙をぬぐっていたのは見間違いだったのかと思わせる。




「あの………。」




通り過ぎる背中に、思わず声を掛けたのは………









俺の方。






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