検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:26,643 hit

サイレントレター ページ12

.




あなたは不器用だった。
言葉を紡ぐことは得意なはずなのに、何故かこの時にはそれができなくて。ただ真っ直ぐに私を見つめて、愛おしげで、それでいて泣き出しそうな顔をして、私にその顔を近づけた。

鼻へのキス。私はその意味を、あなたにされる前から知っている。
知っていたから悟った。私はあなたの恋愛対象じゃない。


「好きなの」。そう告げた私に、曖昧な表情が返された。「そっか」と、肯定も否定もせずに三好一成は微笑む。


「私じゃだめ?」
「……まだ返事してないじゃん」
「だって、断るでしょ?」


逡巡の後、首が縦に振られる。予想通り、仕方ない、なのに諦めがつかない。子供のような表情をした私の鼻に、そうして彼はキスをした。


「大好きだよ。……ごめんね」


どれだけ不器用なキスだったとしても、あなたは私より大人だった。
大人だから、そのことを知っているから、私はあなたを好きになったのだ。

私のことを、あなたが好きになるわけがない。私があなたよりもずっと子供で、ずっと世間知らずなことを、あなたは知っている。
彼が私を想うのは、今だけだ。私から目を逸らせばもう、これで終わりだ。


「今のことは忘れて。オレも忘れるから」


明日も明後日も、嫌でも彼と私は顔を合わせる。気まずいから、彼は私の気持ちを無かったことにする。最善の選択で、最悪の選択だ。


「……お兄ちゃん、」


ねえ、私がいつかまた、あなたに好きだと言ったら。
その時も今と同じように、鼻にキスを落としてほしいの。

せめてあなたの、大切な妹として。





作者名:芹華
キスの位置と意味
青春の結末:首(執着)
サイレントレター:鼻(愛玩)
他作品:マリオネットの夜【轟焦凍】

神イベきちゃった→←青春の結末 2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (40 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
33人がお気に入り
設定タグ:A3! , キス , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:音猫 x他3人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月11日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。