青春の結末 2 ページ11
.
「そんな嫌そうな顔すんな」
「……見えてないでしょ」
「さぁな」
「とりあえず離して」
彼は私から手を離さない。離すつもりもないようだ。私の言葉に、彼は一層力を込めた。――番号が変わったかなんて、聞く意味無かったんじゃないの。どうせ、こうやって引き留めるつもりだったんでしょ？
「じゃ、行くか」
こうして彼のペースに乗せられてしまえば、もう終わりだ。私はこの後に彼がとる行動を知っている。刻み付けられた青春が、甘く苦く残っているのだ。
人の輪から離れる。いつしか肩にあった手は、私の手まで下りてきていた。
高校3年生の冬、彼は私の首に噛みついた。
彼にとってのあのキスがどういう意味の行為だったのか、私は知っている。離れることを拒んだ執着だ。卒業が近付いた3学期、彼は私に何度も告げた。――好きだ、本気だ、と。
キスは、合意じゃなかった。
手を引かれた路地裏で、彼は私と向き合う。手は離されている、それでも私は逃げ出さない。
「もう聞いてもいいよな？ 返事」
もう少し待って、と、返事を先延ばしにあの冬を過ごした。
今日は、『もう少し』の結末だ。
準備は出来ている。だから逃げなかった。
彼に会いたくなかったのは、またこうして執着されることに気付いていたからだ。
――だけど、執着されることを望んでいる私が、ちゃんとここにいる。
マフラーを、外す。冷え切った外気が首筋を刺した。
唇はまだ早い。だけど、
「今度は合意ね」
あなたになら伝わるでしょ？ この言葉。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 33人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：音猫 x他3人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年1月11日 7時
