９.Ｋｉ ページ9
「っ、…大丈夫！ちゃんとわかってるから。」
その先の言葉は、簡単に想像出来てしまう。
何年一緒にいると思ってるんだ。
その顔からも、声音も…思考も。
簡単に、理解ってしまうから。
もうこれ以上の拒絶は…いらない。
Ｆ「…っ、北山、」
「あ、戸締りよろしく。俺、先帰るわ。」
藤ヶ谷よりも先に、バタバタと私物を掴んで足早に楽屋を後にする。
これ以上二人きりはダメだと、タイミング良く降りてきたエレベーターが目に止まり、走ってその場へ滑り込んだ。
早く早くと、焦る心。
視界の端に映る影に、「閉」のボタンを連打する。
藤ヶ谷じゃなければ、こんなことしないけど。
こんな狭いエレベーターの中でも二人きりだなんて、俺の気持ちが耐えられない。
目の前でゆっくりと閉まっていく扉を見つめながら、ゴンっと背後の壁に身体を預ける。
扉が閉まってしまう瞬間、最後に重なった瞳は、強く揺らめいていた。
その瞳が何か言いたそうにこっちを見ていたから、ドキッとした。
心臓が痛いって、多分こうゆうことだ。
エレベーターが降るとともに、壁に預けた身体がずるずると沈んでいく。
そのまま両膝に顔を埋めて、深く溜息を付いた。
「……俺のバカ。良い加減諦めろ。」
そうやって、何度も自分に言い聞かせてまるで呪文のように幾度となく言葉にする。
その方が、本当に効くような気がするから。
しゃがみ込んだまま中々立ち上がれずに、ぼんやりと小さくなっていく数字を見つめる。
こんな格好で他人と出会すわけにはいかない。
重い腰を何とか引きずり上げて、パンツに付いた埃を気休め程度に払った。
静かに到着するエレベーター。
何の前触れもなく、スッと開く扉。
何事もなかったかのように、自身を整えて歩き出せば、余裕も時間もなく視界に飛び込んで来た光景に、ピタッと全身が固まる。
役目を終えたエレベーターは、また静かに動き出す。
背中で通り過ぎて行くそれを確認して、とうとう逃げ道を失ったと苦く笑う。
…もう、本当にこれ以上はやめてくれ。
何で…なんで、
「……藤ヶ谷がいるの、」
俺の目の前で、はぁっと、大きく息を吐き出して、肩で呼吸する藤ヶ谷。額にじんわりと浮かぶ汗に、わざわざ走って階段で追いかけて来たのかと、想像する。
そんな都合の良い想像力に、呆れて自嘲気味に勝手に笑みが溢れた。
お互いの間に流れるピリピリした空気。
この険悪な雰囲気を先に破いたのは、
Ｆ「…何で逃げるの。」
藤ヶ谷だ。
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蜜柑(プロフ) - いゆらんさん» いゆらんさん、こんばんは！またまたお返事遅くてごめんなさい(^◇^;)太輔さんのウジウジターンがちょっとウザいですが、もう早くみっちゃん振り回して欲しいです(もはや、願望)みっちゃんもこれから揺れまくります！笑 (2021年9月10日 21時) (
レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
いゆらん(プロフ) - おはようございます♪玉ちゃんの牽制がわかりやすく太輔さんの落ち込みが堪りません^ ^そして、みっくんの太輔さんに対する切なさが愛おしく続きが楽しみでワクワクしております。更新をお待ちしておりますm(_ _)m (2021年8月12日 7時) (レス) id: 489ddd4174 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - ひろさん» ひろさん、こんにちは！とっても遅くなってごめんなさい(^◇^;)本当に対照的…専らたまちゃんの甘々攻撃が続いてますが、太輔さんも頑張ります！笑でもやはりきっかけはみっちゃんからかもしれないですね…((*ﾟ∀ﾟ)) (2021年8月8日 11時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やや子さん» やや子さん、お返事遅くなってごめんなさい(^◇^;)あのシーンはほぼ行き当たりばったりですね笑ご期待に応えられるかわかりませんが、とことん拗らせてみますね笑 (2021年8月8日 11時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 蜜柑様、初めまして。読める作品は殆ど拝見しました！ 色んなお話があって、とても楽しませて頂いています！「奪い合い」、素直になれないＦさんと対照的にめちゃめちゃ素直なTさんに揺れるＫさんの気持ちが分かりすぎて、続きはどうなるのか楽しみです(o^^o) (2021年7月28日 21時) (レス) id: eef22d22d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蜜柑
| 作成日時：2020年11月1日 11時
