42.F ページ42
絡んだ指先がじんわりと熱い。
どちらからともなく感じるその熱に、小さくキュッとその指先を握り返す。
何も言わない北山の顔をそっと覗き込み、ただただ繋がれた指先だけの熱を感じる。
放ってしまった言葉はもう取り消せない。
肯定とも取れる北山の反応に、やっぱりそうなんだと、無理矢理納得することしか出来ない。
名残惜しい指先の熱をそっと手放す。
離れた瞬間、縋るような北山の表情。
その瞳を見つめ、曖昧に微笑んで最後にどうしても聞きたいことをゆっくりと言葉にする。
「……北山はもう、俺のこと好きじゃない…?」
北山の前で、初めて好きと言う気持ちに触れた。
好きなのかと、問うた言葉に北山の表情が激しく歪む。
別に責めているわけではないのに。
ただ、確かめたかっただけ。
もうこれ以上は本当にダメだと、答えも聞かずにくるりと背を向ける。
「ごめん、やっぱり忘れて。」
聞いたのは自分なのに、もう好きじゃないと言われてしまえば、頑張りようもないし、何より胸が痛くて…苦しい。
(…北山も傷付けて、自分も傷付いて…嫌な悪循環…、)
今度こそ立ち止まったリビングから離れる。
多分今度は、追いかけてこない。
泣きそうになる瞳を必死で堪えて、丁寧に揃えられた靴に両足を突っ込んだ。
あぁ、もう。
本当にカッコ悪い。
北山がもう俺のことを見てくれない。
もうそれが、全てじゃないか。
苦く笑って、ドアノブに手をかけた時、叫ぶように届いた言葉にドクンと、激しく心臓が揺れた。
信じられない気持ちで、顔だけ振り向いて、その先をジッと見つめ返す。
「…っ、」
流れる沈黙。
気まずそうに時々、北山の視線がスッと離れていく。
その場から動こうとしない北山を見つめ、そっと口を開く。
「……本当だったら俺、もう遠慮なんてしないから。」
放ってしまったセリフに、北山の瞳が戸惑いに揺れる。
訳もわからずオドオドする不自然な姿に、自然と笑みが溢れた。
Ki「…っ、どうゆう意味だよ…!」
何とか絞り出した、そんな言葉。
必死で俺に向かって叫ぶ北山。
今だけ。
今だけは、お前の中は俺でいっぱいなんだと、そう思いたい。信じたい。
それくらい、北山らしくない慌てた姿に笑わずにはいられない。
まだ…、
まだ間に合う。
俺、お前のことが好きだから。
好きだって気付いたから。
絶対、俺のこともう一回好きだって言わせてみせるよ。
…取り戻してみせるよ。
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蜜柑(プロフ) - いゆらんさん» いゆらんさん、こんばんは!またまたお返事遅くてごめんなさい(^◇^;)太輔さんのウジウジターンがちょっとウザいですが、もう早くみっちゃん振り回して欲しいです(もはや、願望)みっちゃんもこれから揺れまくります!笑 (2021年9月10日 21時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
いゆらん(プロフ) - おはようございます♪玉ちゃんの牽制がわかりやすく太輔さんの落ち込みが堪りません^ ^そして、みっくんの太輔さんに対する切なさが愛おしく続きが楽しみでワクワクしております。更新をお待ちしておりますm(_ _)m (2021年8月12日 7時) (レス) id: 489ddd4174 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - ひろさん» ひろさん、こんにちは!とっても遅くなってごめんなさい(^◇^;)本当に対照的…専らたまちゃんの甘々攻撃が続いてますが、太輔さんも頑張ります!笑でもやはりきっかけはみっちゃんからかもしれないですね…((*゚∀゚)) (2021年8月8日 11時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やや子さん» やや子さん、お返事遅くなってごめんなさい(^◇^;)あのシーンはほぼ行き当たりばったりですね笑ご期待に応えられるかわかりませんが、とことん拗らせてみますね笑 (2021年8月8日 11時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 蜜柑様、初めまして。読める作品は殆ど拝見しました! 色んなお話があって、とても楽しませて頂いています!「奪い合い」、素直になれないFさんと対照的にめちゃめちゃ素直なTさんに揺れるKさんの気持ちが分かりすぎて、続きはどうなるのか楽しみです(o^^o) (2021年7月28日 21時) (レス) id: eef22d22d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2020年11月1日 11時