34.Ki ページ34
綺麗に装飾された洗面台。
観る物全てが高級品だとわかる代物。
そんな見慣れない物に囲まれて、鏡に映る自分を睨み付けるように見据えた。
はだけたシャツを掴みながら少しだけ肩口をずらした。
たったそれだけの行為で今日の出来事がブワッと蘇る。
何の躊躇いもなく触れる藤ヶ谷は、何を思ってそんなことをしたのか。
忘れようと何度も言い聞かせた気持ちは、簡単に湧き上がってきてしまう。
(…まだ、俺…)
泣きそうになる表情を歪めて、クシャッと前髪を掴んだ。
俯き、深く溜息が溢れる。
不意に感じた微かな気配。
背後から首に回る両腕。
カリッと耳たぶを甘噛みされて、俯いた顔を咄嗟に上げた。
T「……気に入らなかった?」
鏡越しに、たまと視線が絡み合う。
回された腕にそっと触れ、さり気なくその腕から逃れる。
くるりと振り向いて、俺を伺うたまの顔を見上げる。
「いや、そんなことねぇよ。もう充分。」
こんなデート、そう人生で経験することもない。
自分が落ち着かないってのもあるけど…、
幼かった玉森が、こんな大人なデートを計画して夜景の観える超高級なホテルで一晩を明かすなんて、想像だにしない。
T「…ふふっ(笑)」
たまの顔を見つめ、ぼんやりとこの行末を見守っていたら、嬉しそうに微笑み返してくれる。
「…なに、笑ってんだよ。」
T「ん?(笑)みつが俺のそばにいるのが嬉しくて。」
「……いつも、一緒にいるじゃん。」
たまの言葉に小さくぽつりと返せば、そうだけど、そうじゃないよ。とクスクス笑いながら俺の頬に触れる。
目を細めて、ゆっくり近付くそれに、少したじろぎながらまぶたを閉じる。
こうゆう甘い空気は、本当に慣れない。
優しく下唇を喰むようなキスに、堪えた吐息が小さく溢れる。
「…んっ…、」
T「……もういっかい、する?」
唇の先が触れそうで触れない近さで、たまが艶かしい吐息を吐きながら呟く。
ついさっきまで、散々愛された身体。
体内に残る熱が、じんわりと疼く。
それでも、微かに頭の片隅を過ぎる彼奴の存在。
今日は特にそれが顕著に俺の脳内を支配している。
たまの肩に触れ、そっと押し返す。
「……今日は終わり。明日、早いから。」
たまの表情を伺いながら、やんわりと拒否する。
一瞬、ほんの少しだけたまの眉が反応したけれど、それでもいつもみたいに笑って、俺から離れていく。
たまの背中を見送りながら、見透かされそうになった心を静かに撫で下ろした。
920人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蜜柑(プロフ) - いゆらんさん» いゆらんさん、こんばんは!またまたお返事遅くてごめんなさい(^◇^;)太輔さんのウジウジターンがちょっとウザいですが、もう早くみっちゃん振り回して欲しいです(もはや、願望)みっちゃんもこれから揺れまくります!笑 (2021年9月10日 21時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
いゆらん(プロフ) - おはようございます♪玉ちゃんの牽制がわかりやすく太輔さんの落ち込みが堪りません^ ^そして、みっくんの太輔さんに対する切なさが愛おしく続きが楽しみでワクワクしております。更新をお待ちしておりますm(_ _)m (2021年8月12日 7時) (レス) id: 489ddd4174 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - ひろさん» ひろさん、こんにちは!とっても遅くなってごめんなさい(^◇^;)本当に対照的…専らたまちゃんの甘々攻撃が続いてますが、太輔さんも頑張ります!笑でもやはりきっかけはみっちゃんからかもしれないですね…((*゚∀゚)) (2021年8月8日 11時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - やや子さん» やや子さん、お返事遅くなってごめんなさい(^◇^;)あのシーンはほぼ行き当たりばったりですね笑ご期待に応えられるかわかりませんが、とことん拗らせてみますね笑 (2021年8月8日 11時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 蜜柑様、初めまして。読める作品は殆ど拝見しました! 色んなお話があって、とても楽しませて頂いています!「奪い合い」、素直になれないFさんと対照的にめちゃめちゃ素直なTさんに揺れるKさんの気持ちが分かりすぎて、続きはどうなるのか楽しみです(o^^o) (2021年7月28日 21時) (レス) id: eef22d22d3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蜜柑 | 作成日時:2020年11月1日 11時