奪い愛

２３.Ｔ ページ23

みつの心にいなくても、無意識に俺を求めてくれる。
そんなみつの行動を、仕草を信じたい。


背中に触れられたみつの熱に支配される。
まるで、纏った衣装にまで俺の神経が伝わっているみたいに。
縋るように掴まれた衣服の裾。
たったそれだけの仕草に、色々悩ませていた思考は簡単にどこかに飛んでしまった。


振り向いて、みつと向き合う。
捕らえた表情は、酷く…扇状的。


色々、飛んでしまいそうな意識を無理矢理引き止める。
これから仕事なんだと、何度も自分に言い聞かせて。


素直に、俺に付いて歩くみつ。
こっそり盗み見た表情に、嫉妬する。


すぐにわかってしまう。
ずっと見てきた、その顔。


誰を想ってるかなんて、クイズにもならないくらい。
ふとした瞬間に、そうやってがやを想うみつ。


心底…悔しいって思う。
そんな顔をさせるがやが、羨ましいって何度も思う。
みつと付き合っているのは、俺なのにって。
モヤモヤした黒い感情が腹の奥の方で渦巻いている。


みつの側にいる時は、いつだって綺麗な自分でいたいのに。
ただの自己満足でも…
少しでも、君の心に残れる自分で在れるように。


渦巻く感情に苛々する。
だんだんと早まる速度。
それでも離れずに、離さずに俺に付いて来てくれるみつ。
時折、ぎゅっと繋がれる手のひらに黒い感情が浄化されていく気がする。
あぁ、やっぱりみつじゃないとダメなんだと、やっぱりそうやって自覚するんだ。


あっとゆうまに付いてしまった収録場所。
短い距離に落ち込み、繋がれた手を名残惜しく離す。
離された手をそのままみつの髪に触れる。
頬にかかる髪をそっと耳にかけながら、流れるようにその頬を優しく撫でる。


「……今日、みつんとこ行っていい？」


昨日もみつと一緒だった。
今朝も俺のとこから一緒に来たところ。
断られるって、わかってても、ついつい離れ難い一心でそうやって聞いてしまう。


フッと視線を逸らして俯くみつ。
やっぱりダメかと、触れた頬から手を離して。


いつもみたいに、なんてね、って誤魔化そうと笑みを作る。
口を開きかけた時、俺よりも先に俯いたみつの口からそっと零れ落ちてくる言葉。


Ｋｉ「……待ってる。」


力強い言葉に、俺を捕らえる揺らめく瞳。
気恥ずかし気に染まる頬は、嘘じゃない？
嬉しさに、俺の全身が慄く。
じんわりと胸に灯る熱に、浮かされてしまう。


「…っ、絶対待ってて。」


勢いよく放ったセリフに、照れたようにみつが笑った。

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