奪い愛

３.Ｋｉ ページ3

身体中の痺れに加えて、あちこちに走る痛み。
おまけにガヤガヤと騒がしい。


(つか…、)


「ッ、重っ…！」


左肩に掛かるズッシリとした重みに、寝心地悪い体勢を直そうとして、身体を捩って抵抗した。
身を捩ると共に、独特な甘い香りが漂ってくる。その香りに絆されて、キュッと唇を噤む。


「…あ……、たま…？」


ぼんやりとする頭が、ようやくその人物を認識する。鼻孔を擽るその香りは、良く知っている香水の匂いだ。


たまの顔を覗き込むようにして確認していたら、相変わらずどこか楽しそうに笑顔を浮かべて、前方からひょっこり顔を出す宮田。
幾分か、小さい小声で話しかけてくる。


Ｍ「なんかね、朝からみつの隣だー！ってはしゃいでたよ？(笑)」


宮田のセリフに、容易に想像出来ちゃうたまの様子に、自然と笑みが溢れてしまう。


「…たまたまだろー(笑)」


Ｍ「俺が乗り込んだ時には、きたみつの隣陣取ってた(笑)」


いつの間にか、すっかり大人になったたまの寝顔を見つめる。
それでもこうゆうところは、まだまだ変わらない。


(ま…やっぱり、可愛いよな…)


スーッと寝息をたてるたまの顔をそっと覗き込む。
俺よりもすっかり熟睡してるらしく、中々起きる気配もない。


Ｍ「…きたみつ、それやめてー(笑)」


さらに身を寄せて、こっそり耳打ちしてくる宮田にギョッとする。
気まずそうに、苦く笑う宮田。


慌てて、たまから少し離れて宮田に近付く。
見兼ねたように宮田が、小さく口を開く。


Ｍ「…めっちゃニヤ付いてる。」


「……へ…？」


さらに身を乗り出す俺の身体は、途中、ぴったりと止まってしまう。
ぎゅっと腰に回った両手が、硬くて外れてくれない。
だんだんと掴まれた力が強くなるにつれ、そっと振り返ってその顔を覗き込み、ジッと見つめる。


「……お前、起きてんだろ。」


小さく呟いた俺の言葉に、ピクッとたまの眉毛が揺れている。
まさかの狸寝入りに、呆れてしまう。
さすが、グループいちの俳優だ。


Ｔ「へへっ(笑)バレたー？」


「そりゃ、こんだけぎゅーぎゅーされたら気付くだろ。」


言いながら、後ろから回った腕を剥がそうとたまの腕を引っ掴む。
それでもジリジリと締め付けてくる気配に、キツイ視線でたまに諭すように目配せする。


Ｔ「ね、ちょっとだけだから。」


たまの力強い腕に、特別な想いが乗せられていると思うと抵抗できない。
自惚れでも何でもなく。


…たまに好きだと言われあの時から。

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