奪い愛

２０.Ｋｉ ページ20

俺にきつく、でも優しく諭すようにそう言うとソファから腰を上げて立ち上がる。
一瞬、どこかに視線を彷徨わせてから、まるで王子様のように俺に手を差しでくる。


「なっ、…なんだよっ！」


宮田の挙動不審な行為に思わず身構えてしまう。
そこら辺にあるクッションを抱きしめて、呆然と見上げたら、宮田の背後に幾分か高い影が重なる。
宮田の手のひらにがっしりと重なる別の手のひら。


Ｍ「ちょっと痛いかなー(笑)なんて。」


宮田が苦笑しながら、掴まれた手のひらを徐に振り払う。


Ｍ「ちょっとした出来心だよ♡」


そう語尾にハートマークを付けて、宥めるようにその肩を優しく撫で返す宮田。
そんな宮田の一連の行為に呆れた表情を浮かべているたま。


Ｔ「…冗談でもそうゆう遊びやめてくれない？」


言いながら、宮田とたまの位置がクルッと変わる。
丁度たまと重なって、見えなくなってしまった宮田がひょっこりとたまの肩から顔を出す。


Ｍ「ほら、疑っちゃダメでしょ？たまの一番は、きたみつなんだよ。」


何度も頷いて、自分だけ完結したような満面の笑みを浮かべている。
おまけにばっちりとウィンクを決めたと思ったら、ヒラヒラと手を振りながら俺たちの前から消えていく宮田。
そんな宮田の背中を二人してぼんやりと見つめる。


「………、」


Ｔ「………、」


チラッとたまを盗み見る。
ばっちりと重なる視線にたじろぎ、慌ててそこから逸らす。
それでもじっーと、ねっとりと絡み付くような視線の圧迫感。
一歩、大きく足を出して近付くたまの気配。


クッションを抱きしめて座り込む俺に向かって、覆い被さるように前のめりになってくるたまに、逃げられないと観念した。
横向きに逸らしていた視線を渋々元に戻す。


Ｔ「……なんの話？」


口元は笑っているけど、目は笑っていない。
まさにそんな表情のたまが俺を問い詰める。


「……たまちゃんさー、宮っちとその…」


言いたいことは最後まで言わせてもらえなかった。
トンと、軽く肩を押されてソファに片手首を縫い付けられる。
真剣な…でも、切なく震える瞳が全てを語るように俺の瞳に重なる。


…知ってるよ。疑ってなんかない。
たまが、どれだけ俺を愛してくれているのか。

…ちゃんとわかってるんだ。


それでも、これで本当に良かったのだろうかと、時々…後悔する。






だって、お前らって本当に羨ましいくらいの絆で結ばれているじゃないか。
俺なんかが、割り込めないくらいに。

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