奪い愛

１９.Ｋｉ ページ19

触れた唇は、否応なく熱くて。
与えられた熱と感触を思い出すように指先で触れる。


Ｍ「…きたみつ、どうかした？」


唇の端を親指で拭った矢先、宮田の心配そうな顔が俺の顔を覗き込んできた。
不安気に揺れる瞳。
宮っちは本当に心配性だなぁと、ぼんやり思う。


「…別に、何でもないよ(笑)」


相変わらずの優しい宮田に触れ、くすりと笑みが溢れる。


Ｍ「……さっきからずっと唇触ってるから。」


「っ、ぅ…へ？」


Ｍ「怪我でもしたのかなって(笑)」


ジッと俺の唇を見つめた後、ヘラッと笑って唇を突き出してくる。
その宮田の一連の動作にカッと熱くなる身体。
思わず、自分の唇を右手で隠すように覆ってしまう。


(……っ、ずっとって…やべぇ、)


気付いたら思い出すように触ってしまう唇。
別に初めてでもないのに、たまとしたキスはまるでファーストキスかのような、そんな感覚。


唇を覆ったまま何となく感じる視線に、自分の視線を重ねる。
パクパクと唇を動かすたま。
その動きを読み取れば、またカァッと体温が上がった気がした。


(か…可愛いって、やめろ…)


思わぬ羞恥心に、今度は両手で顔を隠して項垂れる。
へたり込む俺を見て、ギョッとする宮田。


Ｍ「っ、き、きたみつ…？！大丈夫…？」


「ッ、…何でもねぇから。」


たまは、優しい。
優しい上に、どこまでも俺を求めてくれる。
…いつだって側にいてくれる。望まなくたって、気付いたら。
ずっと俺の側にいてくれるんだ。


「っ、はぁぁ…」


乱れた心をどうにか整える。
崩した体勢を元に戻して、座り直したら、ホッとした表情の宮田と顔を見合わせた。
何も言わずにジッと俺を見つめる宮田。


「……どうした？」


Ｍ「いや、なんか可愛いなって(笑)」


「はっ？！！」


宮田の意地悪い笑顔にギュッと眉間にシワが寄る。
可愛いと言われた形容詞に反抗するかのように、ムッとしたまま続ける。


「……可愛くねぇから。」


言葉尻強くそう言えば、ヘラッと笑って宮田が口を開く。


Ｍ「だって、愛されてるんでしょ？(笑)」


「な…っ、何言ってんだお前…ッ、」


Ｍ「たまが毎日幸せそうだし。」


そう言った宮田の顔はどこまでも優しげで。
それこそ、俺の気持ちなんて霞むほどに、宮田はたまをとても大切にしていると実感する。


(俺なんかよりもっと…、)


そう言いそうになって慌てて口を噤んだ。
宮田の顔が珍しく不機嫌に歪む。


Ｍ「疑っちゃダメだよ、きたみつ。」

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