奪い愛

１.Ｋｉ ページ1

好きだと、伝えてしまったことは事実で。
言ってしまった言葉はもう、取り消すことは出来ない。
例えそれが、どんな場面でも。
どんな風に言ってしまったのかも関係ない。


言葉にしてしまった事実はもう、消えない。
そしてそれが、相手に伝わってしまった現実も。


「……ごめん、北山のことそんな風に思ったことない。…考えられない。」


そうやって、振られてしまった事実も、
言葉も、




……消えてはくれない。







＊＊＊




また、あの日の夢を見てしまった。
夢の中でまで好きなヤツに振られるなんて、本当に酷な話だ。


「…今、何時…、」


アラームより目が覚めてしまうことも今日だけじゃない。良く眠れる方だと自覚しているのに、告白騒動の一件以来、十分に眠れた試しもない。


「……早…っ、」


無理やり起こした身体を、またボフッとベッドへと預ける。
ぼうっと天井を眺めて、時々スマホをいじっては予定を確認した。


(…7人で収録と、個別ロケ…)


個別ロケは別にいいとして…
また、全員で収録。


アイツと、
…藤ヶ谷と、会ってしまう。


そりゃあ、避けて通れない道ではあるけれど…
なるべく会いたくないってゆうのが本音だったりする。
藤ヶ谷のことだから、多分。
例え冗談まじりで勢いありきな告白でも、真剣に答えてくれたんだと思う。
受け入れられないこの気持ちは、正直、凄く辛いが、告白して振ったからと言って、おれを適当に扱うようなヤツじゃないとわかっていても…


やっぱり…


「まぁ…、会いたくはないよな。」


別に用もないのにスマホをイジイジ。
気持ち的には見たくない名前。でも心の底では、その名前に嬉しいと素直に思っている。


うだうだとベッドでゴロゴロしていたらあっとゆうまにもうそんな時間。


「っ、ヤバ、今日マネ迎えの日……！」


乱雑に布団から飛び起きて、洗面所へと走る。
さすがにもう、シャワーする時間はない。


口の中に歯ブラシを放り込んで、リビングに放置している荷物をまとめていく。
途中また、洗面所に戻って口を濯ぎ、寝室へと戻る。


見た目を気にしてカッコ付けていた時期もとっくに過ぎて、適当に引っ掴んだ服に着替える習慣がもう身に付いてしまった。
そんな適当に選んだ服でさえ、ファンのコたちは、絶賛の褒め言葉をくれたりする。


「時々ね、みんなの目疑うよ(笑)」


それでもね、これでも一応アイドルですから。
姿見でちゃんと全身チェックしておく。

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