ナイショの恋していいですか？

６.Ｋｉ ページ6

驚きはしつつも、すぐにフワッと笑っておれの頭をぽんぽんする藤ヶ谷。
へんな北山、と小さく笑った後、今日のスケジュールを呟きながらおれから離れていく。


Ｆ「今日は月イチのレギュラー番組の収録でしょ？それから雑誌の撮影だったかな。」


「……そうだった。」


藤ヶ谷に変に思われないように、当たり障りなく返事する。
それに納得したらしい藤ヶ谷が、満足気に微笑む。
その柔らかい微笑みに見惚れて、ぼうっとしてたら藤ヶ谷が急にソッポ向くから慌ててベッドから飛び降りた。


「…っ、藤ヶ谷？」


Ｆ「うん、ごめん。何でもないから。」


あまりに素っ気ないから、嫌われたんじゃないかと小さく胸が痛む。
その藤ヶ谷の姿が…リアルな世界と重なる。


…嫌だ。
今だけは、おれを好きな藤ヶ谷と一緒に、幸せを感じていたいのに。


その場に立ち尽くし、思わず俯いてしまう。


Ｆ「あー…、やっぱりダメだ(笑)せっかく我慢したのに一瞬にして理性崩れた。」


「…へっ？」


フワッと鼻孔を擽る甘い香り。
何度も嗅いでいたその香りが、おれの全身を包み込む。
ギュッと両腕いっぱいに抱き付くされて、全身が熱くなる。


「…よかった、嫌われたのかと思った。あっ、」


無意識に吐露した本音。
言ってしまったモノはもう戻せない。
戸惑い、焦りながら藤ヶ谷の胸元から顔を上げたら、きょとんとした藤ヶ谷の顔がおれを見つめている。


Ｆ「北山、そればっかり。嫌いになることなんて、この先、一生ないから。」


言葉の節々が、少しキツイ。
けれど、その瞳がウソを言ってるだなんて思えないから…、


「……おれも好き。」


こっちだと、こんなに簡単に言えるのに。


どうして…言えないんだろう。
なんであいつのこと、好きになっちゃんたんだろう。


どうして。
なんで。


そればっかり考えて、閉じ込めて、早く失くしたくて。
そうやって自分の気持ちに向き合えなくて、ふらふらしてた時に見つけた古本屋さん。


古本屋なのに、昔ながらあるようなゲームソフトが、ちょこんと置いてあって。
古本屋のじぃちゃんが、全然売れないからあげるって。
タダで貰ったゲーム。


説明書も何もなくて、ただ、瞳を閉じて…備え付けのベッドフォンして深く…深く眠りに付いただけ。


気付いたら、目の前に広がる…
もうひとつのリアルな世界。


ここは、おれと藤ヶ谷が付き合っている世界。


……おれと藤ヶ谷が好きあってる世界だ。

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