ナイショの恋していいですか？

３４.Ｋｉ ページ34

薄く唇を開く。
藤ヶ谷とのキスを思い出しながら、その唇を押し付けようと背伸びする。


角度を変え、近付く距離。
生暖かいそれに優しく口付ける。


「…んっ…ぁ、」


こうやってずっと、キスしたかった。
藤ヶ谷と何度も。


重なる唇の感触は、あの時重ねていた唇と同じ。
やっぱりおれと向こうでずっと一緒だったのは、本物の藤ヶ谷だったんだと改めて理解する。
泣きたくないのに、嬉しさのあまりじわじわとまぶたが熱くなってくる。


「ん…ふっ、…んぁ、」


Ｆ「っは…きたやまっ…、」


頬に流れる滴。
そっと唇を離した藤ヶ谷が、苦く笑いながら優しく拭ってくれる。


Ｆ「さっきから泣いてばっかりだし(苦笑)」


「…っ、泣いてねぇし！」


Ｆ「……北山ばっかり泣かないでよ。」


頬に優しく触れたまま、切なげに藤ヶ谷が小さく呟く。


凄く、遠回りした。
現実では、向き合うことが出来なくて。

ただ、自分の気持ちを抱えることが出来ずに、不思議なゲームに没頭した。


これがリアルならどれだけ幸せなんだろうって、いつだって、何度だって思った。


(…おれだけじゃ、なかった…)


頭では言いたいこと、思うこといっぱいあるのに、上手く言葉にならない。
ただただ、こうしたかったと好きだと言う気持ちを乗せて藤ヶ谷に回した腕の力を強くする。


Ｆ「…きたやま？」


「……好き、…好きなんだ。」


Ｆ「ん、もう充分伝わってる。」


縋るようにまたその唇に自身の唇をそっと押し当てる。
小さく、くちゅっと卑猥な音を鳴らして、もう幾度となくそのキスに溺れた。


「んっ…はぁ…、」


Ｆ「…ッ、きたやま、ね…あっち。」


コツンとオデコをくっ付けて、物欲しそうな藤ヶ谷な瞳とぶつかる。


…ここに来た時から期待していた。
こうなるだろうって期待してたんだ。


キスの先も。


チラッと視線を外した、藤ヶ谷の視線を追う。
開け放たれた扉の隙間から、艶かしいそれが目に入る。
真っ新で白い…綺麗なベッドは現実でも変わらない。


いよいよ、リアルな時間を目の当たりにしてカァッと全身の熱が這い上がってくる。


よくよく考えれば…おれは。


もう既に、何度も藤ヶ谷と身体を重ねているのだ。
あの時の熱を思い出して、全身が熱く、苦しい。
ドクドクと忙しなく鳴る心臓を押さえ付けるように、胸を掻き抱く。
藤ヶ谷に手を繋がれて、連れられるまま寝室へとそっと侵入した。


…本当に、夢みたいだ。

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