ナイショの恋していいですか？

４.Ｋｉ ページ4

Ｔ「……ほどほどにしときなよ。」


「お前がそれを言うのかよ(苦笑)」


たまの不機嫌な視線を感じながら、ようやく重い身体を起こす。
タイミングよく先にメイクを終えたメンバーが楽屋へと戻ってくる。
たまに促されながら、ソファから腰を上げて入れ替わりにメイク室へと向かう。


すれ違い様、視界の片隅にチラッと盗み見る人物。
相変わらず、横尾さんとたわいない話をして、楽しそうににこにこ笑って…時に千賀へのちょっかいなんかもかけていたり。


おれと藤ヶ谷の関係なんて…、


リアルではこんなものだ。


仕事仲間であり、メンバーであり、必要とあらば交わす言葉。
本当に、必要なことだけ。必要なときだけ。


……おれと藤ヶ谷の関係なんて、
……所詮こんなものだ。


Ｔ「みつ？早く行くよ？」


ぼうっとしながら歩いていたら、たまが振り向きざまに急かしてくる。
確かに、あいつを思って物思いにふけるとかこんなとこで、やるもんじゃない。
すぐ様移した視線を外した筈なのに、怪訝そうな瞳でこっちを見る視線に驚き、肩を竦め慌てて落とした。


(しまった…見過ぎてしまった。)


突き刺さる視線が痛い。
その無言で牽制されてるような視線に耐えきれず、そそくさと楽屋を後にする。
藤ヶ谷に気付かれないように、そっと捕らえていたはずなのに。
今日の生放送は、昨日の生放送と違って、気持ちが重たい。


(…って、当たり前なんだけど…)


思い悩んでいたら、知らぬまにしっかりとおれの顔は生放送用に、出来上がっていた。


メ「北山さん！今日もカッコいいの期待してますから！！(笑)」


「…どうも。」


いつもならそのメイクさんのノリにも上手く返せているのに、今日はやっぱり気分が乗らない。


早く…
早く、ウチに帰りたい。


ウチに帰って、思い悩むこの気持ちを払拭させたい。
今のおれは、もうそれのことで頭の中はいっぱいだった。


今日頑張れば、またご褒美を味わえる。
自分の気持ちに、素直に…、好きだと言える世界。


おれの気持ちに、幸せいっぱいに返してくれる愛しい世界。


好きだと言う言葉に、好きだと返してくれる世界。









　









小さな古本屋で見つけた、おれだけのゲーム。


……早く、その世界に帰りたいんだ。

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