29.F ページ29
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チャリと揺らめくネックレスの向こう側。
どこか苦しそうに微笑みを浮かべ、ひどく辛そうに震える瞳に息を呑む。
「……北山なの?」
本当に、あの北山なの?
おれが愛して、北山が愛してくれた…あの北山?
Ki「……だったらいいのにって、思うんだけど…これって夢か…?」
目の前で揺れていたネックレスをキュッと掴み、それを愛おしそうに優しく見つめ、北山の手のひらに包まれていく。
その仕草に、さっき大切に仕舞ったネックレスを無意識にシャツの上から握りしめる。
ひとつひとつ、でも確かにこれまでの時間をゆっくりと紡がれていく唇。
時々、チラッとおれを見据える視線は、何かを探るように訴えている。
ついこないだ、別れたその時間すら呼び起こされて、苦しい。それでもやめることなく話す北山の唇は、今まさに現実で、その場におれがいたということ。
Ki「……やっぱり、おれ…夢見てんのかな?」
最後にそう言って、俯く北山の頬にキラッと光る滴。
目の前の北山は、おれが愛した北山。
ただ、それだけの理由で項垂れる手を掴んでグッと引き寄せる。
Ki「…っ、藤ヶ谷っ…、」
なんでかな…
なんでこんなに安心してんだろう。
北山が、おれの胸の中にいる。
それがこんなにも幸せで、やっぱり好きなんだと気付かされてしまう。
「…別れるなんて、言わないでよ。ね、北山…、」
これがリアルなら。
何度そう思ったか、数知れない。
……リアルなら、手放さないと。
いつだって思っていた。
Ki「……藤ヶ谷、」
「…理由、今なら…聞いていい?」
別れたいと思った理由。
おれの胸の中で戸惑う北山を見つめながら、最後にそれを付け足す。
おれの言葉に、目一杯両目を見開いて驚き、そのままおれを置き去りに下がっていく視線。
俯く北山の頬を掴み、無理矢理上向かせる。
近しい距離で行き交う視線に、自然と胸が高鳴る。
これがいつものゲームじゃなくて、今まさに起こっている現実なんだと、確かめるように熱く、胸を焦がしていく。
Ki「……藤ヶ谷…に、別れろって言われた。」
か細い声で、聞こえるか聞こえない大きさで、辛そうに北山が言う。
おれ…、おれのせい?
「…っ、そんなこと…言った…っ?」
あの幸せな世界を、自分から手放した?
まさか、そんな…ありえない。
北山の放った言葉に呆然とし、無意識に抱き留めた力を強くする。
Ki「っ、…違う、あの…!」
慌てふためく北山が続ける。
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ちび(プロフ) - めっちゃ楽しすぎました、パララブ不思議な世界観めっちゃ好きでした、長い間2人外にいたから、楽屋での5人は心配だったでしょうね。続妄想してます。楽しい話でした💓❤️ラブラブ藤北可愛いすぎました。 (2023年4月20日 23時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - はじめまして。先程、こちらの昨日を読ませていただきました。思いもかけない展開に、ドキドキして一気に読み進んでしまいました。想像出来ない展開、すごく面白かったです(o^^o) これから他の作品も読ませていただきます(o^^o) (2021年6月24日 22時) (レス) id: 879c96607e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - くらげさん» くらげさん!!お返事遅くなりごめんなさい(^◇^;)私も愛されまくりのみっちゃん大好物です笑私もくらげさんのお話全力待機してまーす!!いつもありがとうございます! (2020年8月5日 17時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - 蜜柑さん、完結お疲れ様でした!この2人はこれから先もずっとこんな感じでラブラブなんだろうと思わせて貰えてとても幸せな気持ちになりました!ありがとうございます(*´ω`*)明日〜も楽しみにしておりますし総受けも是非読みたいです!愛されKさん幸せすぎます(〃ω〃) (2020年8月2日 1時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - たまちゃんさん» こんばんは!本当ですか?!(^◇^;)ひとりでもいらっしゃるなら嬉しいです!! (2020年7月30日 21時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2020年1月26日 19時