27.Ki ページ27
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「ねぇ、藤ヶ谷…、ちゃんと聞いて。」
F「…っ、嫌だ!そんなの…絶対に嫌だから。」
おれなりに頑張って作った夕食をテーブルの上に挟みながら、切り出した話題に藤ヶ谷が頑なに拒んでいる。
本当はずっともう…
このままではダメだとわかっていた。
この世界は確かに幸せで、おれの思い通りにコトが進む愛された世界。
別れようと呟いた言葉は、この愛された世界ですら…、培った幸せは一瞬にして消えていく。
例え、ゲームだと割り切っていても。
「…お前とはもう…一緒にいられないんだ。」
F「何それ。そんなの納得できるわけないでしょ。」
おれの顔も見ずに、口早くそう言う藤ヶ谷。
藤ヶ谷のその態度を見つめて、ゆっくりと視線を落とす。
手のひらに握られたそれを確かめて、徐に腰を上げる。
テーブルに置いたままの握られた拳。
時々、キュッと力強く揺れる拳にそっと自身の手を重ねる。
俯いたままの藤ヶ谷を覗き込むようにしゃがみ込む。
上向き、やっと重なる視線。
ひどく揺れる瞳に、ギュッと胸を締め付けられる痛み。
泣きそうな藤ヶ谷の表情に、ヘラッと笑ってその無防備な唇にそっと自身の唇を押し付けた。
これが、最後のキス。
緩んだ拳に、引っ掛けたネックレス。
お互いの指先に絡むそれを確かめながら、少しだけ唇を離して、藤ヶ谷が小さく呟く。
F「……北山なんて、大嫌い。」
「…ん、…ごめん。」
もうーーー
ログインはしない。
藤ヶ谷を瞳に移して、そっと瞼を閉じる。
遠退く意識の片隅で、藤ヶ谷の指先が頬に触れる。
おれの頬を強く拭う仕草に、初めて…あぁ泣いてんだって、わかって。
真っ暗闇な天井を見つめながら、いまだに熱い涙の痕を今度は自分で、ゴシゴシと強く拭った。
…未練はある。
けど、いつまでも疑似恋愛なんてしてられない。
だって、おれはここで生きてるんだから。
涙でベタベタの両頬を思い切り叩く。
勢いよく、ベッドから身体を起こす。
チャリと、首筋で揺れるネックレスに小さくキスを落として好きの気持ちを押し込めるように、大切にシャツの下へと仕舞う。
おれの気持ちは、変わらない。
ゲームの中のお前も。
リアルで生きるお前も。
おれは、藤ヶ谷のことが今でも大好きだよーーー。
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ちび(プロフ) - めっちゃ楽しすぎました、パララブ不思議な世界観めっちゃ好きでした、長い間2人外にいたから、楽屋での5人は心配だったでしょうね。続妄想してます。楽しい話でした💓❤️ラブラブ藤北可愛いすぎました。 (2023年4月20日 23時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - はじめまして。先程、こちらの昨日を読ませていただきました。思いもかけない展開に、ドキドキして一気に読み進んでしまいました。想像出来ない展開、すごく面白かったです(o^^o) これから他の作品も読ませていただきます(o^^o) (2021年6月24日 22時) (レス) id: 879c96607e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - くらげさん» くらげさん!!お返事遅くなりごめんなさい(^◇^;)私も愛されまくりのみっちゃん大好物です笑私もくらげさんのお話全力待機してまーす!!いつもありがとうございます! (2020年8月5日 17時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - 蜜柑さん、完結お疲れ様でした!この2人はこれから先もずっとこんな感じでラブラブなんだろうと思わせて貰えてとても幸せな気持ちになりました!ありがとうございます(*´ω`*)明日〜も楽しみにしておりますし総受けも是非読みたいです!愛されKさん幸せすぎます(〃ω〃) (2020年8月2日 1時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - たまちゃんさん» こんばんは!本当ですか?!(^◇^;)ひとりでもいらっしゃるなら嬉しいです!! (2020年7月30日 21時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2020年1月26日 19時