26.Ki ページ26
放ってしまった言葉を、今更ナシにすることはできない。
おれの言葉に、みるみるうちに眉間にシワを寄せ、訳がわからないとでも言うような表情に、少しだけ後悔する。
でも、言わずにはいられなかった。
F「……何言ってんの、お前。」
冷たく、少し低い声音で突き付けられる現実。
(……っ、本当に、何を言ってんだおれは…)
力一杯胸倉に掴みかかっていた手に、藤ヶ谷の手が触れる。
バシッと払い除けられる腕。
避けられた指先に、シャツの隙間から覗いたネックレスが引っかかる。
「…っ…!」
(…なんでっ、)
指先に絡んだネックレスを勢いよく握り締め、グッとそれに近付いて、視線を凝らす。
「…っ、何でこれをお前が持ってるの…?」
ありえない状況に、頭が回っていない。
見覚えのある、忘れもしないそれに聞かずにはいられなかった。
そんなおれの態度に、少し怯んだ藤ヶ谷。
それでも何も言わずに、掴んだネックレスをおれの指先から抜き取る。
F「……触らないで。」
そう付け加えて。
大事そうに元の場所に仕舞われるそれに、トクンとやけに心臓が鳴り響く。
もしかして…そんな考えが浮かんでやまない。
でもどうして…もうそんなことも考えたくないくらいに、そのネックレスは衝撃的だった。
シャツをきちっと締めて、名残惜しく藤ヶ谷の指先がそこを撫でていく。
見たこともない、慈しむ優しい表情に息が詰まる。
その表情は、おれの恋人だった藤ヶ谷と重なる。
チャリ…、
藤ヶ谷と同じように、無意識にそれに触れる。
隠れたシャツの隙間からそっと指を差し込んだ。
大事に揺れるそれに俯いて、小さくキスを落とす。
藤ヶ谷はまだ…気付いていない。
首筋に回るチェーンを外す。
おれに見向きもしない藤ヶ谷の目の前にそれをかざす。
どこからともなく吹いてくる隙間風に、それを主張するかのように外したネックレスが小さく揺らめいた。
慈しむ優しい表情から一転、見て取れる変化に期待と喜びに胸の奥が震える。
わかりやすく大きく両目を動かして、そこから離れない視線に、ネックレスを持つ手が震えた。
F「…ッ、…何で…っ、どうして、」
揺れるネックレスを掴み、藤ヶ谷の視線が今度はおれへと移る。
まだ不確かな情報。
それでも、好きだと込み上げる自分の気持ちを信じることしかできない。
「……お前に、貰ったんだよ。」
期待と緊張と…少しの願望を乗せて。
藤ヶ谷に伝わるように、丁寧に、慎重にそう言った。
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ちび(プロフ) - めっちゃ楽しすぎました、パララブ不思議な世界観めっちゃ好きでした、長い間2人外にいたから、楽屋での5人は心配だったでしょうね。続妄想してます。楽しい話でした💓❤️ラブラブ藤北可愛いすぎました。 (2023年4月20日 23時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - はじめまして。先程、こちらの昨日を読ませていただきました。思いもかけない展開に、ドキドキして一気に読み進んでしまいました。想像出来ない展開、すごく面白かったです(o^^o) これから他の作品も読ませていただきます(o^^o) (2021年6月24日 22時) (レス) id: 879c96607e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - くらげさん» くらげさん!!お返事遅くなりごめんなさい(^◇^;)私も愛されまくりのみっちゃん大好物です笑私もくらげさんのお話全力待機してまーす!!いつもありがとうございます! (2020年8月5日 17時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - 蜜柑さん、完結お疲れ様でした!この2人はこれから先もずっとこんな感じでラブラブなんだろうと思わせて貰えてとても幸せな気持ちになりました!ありがとうございます(*´ω`*)明日〜も楽しみにしておりますし総受けも是非読みたいです!愛されKさん幸せすぎます(〃ω〃) (2020年8月2日 1時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - たまちゃんさん» こんばんは!本当ですか?!(^◇^;)ひとりでもいらっしゃるなら嬉しいです!! (2020年7月30日 21時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2020年1月26日 19時