23.F ページ23
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珍しく北山がキッチンに立つと言い出した。
不慣れな手付きながらも、一生懸命に夕食を作る北山の背中が愛くるしい。
揺れる背中に我慢出来ずにキュッと抱き付く。
丁度いい位置にある北山の肩にこてんと顎を乗せて、その手付きを覗き込む。
Ki「っ、ちょ…邪魔っ!」
「え〜?」
Ki「…もぉ〜、邪魔すんなって。」
「…北山が構ってくれないから。」
これは本当。
さっきから夕食作りに必死で、おれを視界にすら入れてくれない。
そんなおれの扱いに慣れたように、体よく雑に北山の手がおれの頭をボサボサと撫で付ける。
Ki「もうすぐだから、待ってろよ。」
北山が小さく笑いながらそう言う。
素直に言うことを聞いて、大人しくソファへと腰を落とした。
忙しなく動く北山の背中を見つめながら自然と笑みも溢れてくる。
ふと、頭の片隅で思い出したくもない事を掠めたけれど、フルフルと頭を振るって打ち消した。
別れるなんてきっと言葉の綾で、冗談だ。
あれからそれには、一度も触れていない。北山の口から出たのは、あの時のただの一回きりで、ただのゲームのイベントなんだど何度も言い聞かせた。
Ki「藤ヶ谷!お待たせ。」
北山の声に、ハッとする。
慌てて飛んでいた意識を戻して、テーブルに並べられた手料理に目が釘付けになる。
Ki「簡単なものでわりぃけど(笑)」
「なんで?めちゃくちゃ旨そうじゃん。」
カラフルなサラダにメインはカレーライス。
充分手の込んだ夕食だ。
そんなに空腹でもなかったけど、目の前に並べられたそれを目の当たりにすれば、おれの腹も素直にきゅるきゅると鳴ってしまう。
Ki「可愛い音ですね。」
恥ずかし気もなく鳴る腹の虫を撫でながら、そう言う北山を睨み付ける。
「うるさいから。もう、早く食べよう。」
言いながら腰を落として、佇む北山へと目配せする。ばっちり絡み合う視線。照れ臭そうに瞳をキョロッと動かして、おれの前に北山もゆっくり腰を落とした。
二人一緒に手を合わせる。
いただきます、とどちらからともなく挨拶して、たわいない話をしながら食べ進めた。
残り少ないカレーをスプーンで掬う。
じっーと見ていなくてもわかるほどに圧迫感。
目の前の北山から感じる視線に、スプーンを持つ手が止まる。
「…どうかした?」
そのままスルーすることにも気が引けて、北山を見つめ返す。
一瞬だけ、重なってスッと離れていくそれに胸の奥の方で嫌な音が鳴り響いた。
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ちび(プロフ) - めっちゃ楽しすぎました、パララブ不思議な世界観めっちゃ好きでした、長い間2人外にいたから、楽屋での5人は心配だったでしょうね。続妄想してます。楽しい話でした💓❤️ラブラブ藤北可愛いすぎました。 (2023年4月20日 23時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - はじめまして。先程、こちらの昨日を読ませていただきました。思いもかけない展開に、ドキドキして一気に読み進んでしまいました。想像出来ない展開、すごく面白かったです(o^^o) これから他の作品も読ませていただきます(o^^o) (2021年6月24日 22時) (レス) id: 879c96607e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - くらげさん» くらげさん!!お返事遅くなりごめんなさい(^◇^;)私も愛されまくりのみっちゃん大好物です笑私もくらげさんのお話全力待機してまーす!!いつもありがとうございます! (2020年8月5日 17時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - 蜜柑さん、完結お疲れ様でした!この2人はこれから先もずっとこんな感じでラブラブなんだろうと思わせて貰えてとても幸せな気持ちになりました!ありがとうございます(*´ω`*)明日〜も楽しみにしておりますし総受けも是非読みたいです!愛されKさん幸せすぎます(〃ω〃) (2020年8月2日 1時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - たまちゃんさん» こんばんは!本当ですか?!(^◇^;)ひとりでもいらっしゃるなら嬉しいです!! (2020年7月30日 21時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2020年1月26日 19時