ナイショの恋していいですか？

２２.Ｆ ページ22

「………、」


Ｋｉ「………、」


(…っ、気まず…、)


渉が作った微妙な展開に、お互い佇み向かい合ったまま訪れる沈黙。
時々、重なっては離れていく二人の視線に、胸の奥の方からドッドッと激しく高鳴っていく。
こうやっていくら向かい合っていても、よくよく考えたら呼び止めたのはおれの方だ(正確には渉…)


北山から口を開くことはないのだから、折れるとしたらやっぱりおれの方だと、避けた視線をまた北山へと絡めて、促すように空いたパイプ椅子を見つめた。


「…とりあえず、座らない？」


走る緊張感のせいで少し震える語尾。
情けないそれに気付かれたくなくて、少しでも平静を装いながら北山よりも先に腰を落とした。


パイプ椅子に座りながらぼぅっと佇む北山を見上げる。少し、戸惑い焦る北山に思わずキュッと視線が鋭くなる。


なんだ、
やっぱり結局こうなるんじゃん。


……この距離から向こう側には行けない。
踏み込めない距離に、無意識に深く溜息が溢れた。


嫌なら別に、
そう言いかけて、ドカドカと音を立てながら北山がおれの隣に腰掛けた。


それからキツイ視線でおれを捕らながら縋るように近付いてくる。


「…っ、北山、…なに、」


近付く距離を両手で押し返して静止する。
そんな手のひらにキュッと絡んでくる、少しゴツゴツした小さい手にギョッとする。
驚きに、今度はおれが避けるように腰を上げたところで、グッと北山によって引き戻された。


おれの手に北山の手が重なっている。
有り得ない事実を目の当たりにしながら、北山が口を開いた。


Ｋｉ「……良かった。もう大丈夫そう？…熱は、ないよな？」


握った手のひらが少しだけ強くなる。
たまの言葉通り、北山はただおれを心配していただけ。


掴まれた手のひらをやんわりと押し返して、正面に向き直る。メンバーの個人撮りを眺めながら、激しく動揺する心を無理やり落ち着かせた。


「…お前の方こそ、もう大丈夫なのかよ。」


Ｋｉ「…っ、…なに、」


戸惑いに揺れる気配を不思議に思いながら、特段気にすることなく続ける。


「……寝不足、(と、キスマーク)」


その先は、言えなかった。
北山の恋話なんて、聞きたくもない。


ただ、あれ以降…目に見えてそれを視界に入れたことはない。
…単に、見えないだけってかもしれないが。


北山のそばには、そうゆうことするやつがいるって言う事実にまた、ムシャクシャする。


あー…ダメだ。
早くおれの北山に会いたい。

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