ナイショの恋していいですか？

１５.Ｆ ページ15

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Ｙ「おかえり。みつ、見つかった？」


何でもお見通しだとニコニコと笑いながら話しかけてくる渉に、素直に頷けない自分は心底捻くれていると思う。
おれが返事をするまで、その表情を変えないから観念して渋々頷いた。


Ｙ「…で、みつは？」


北山、北山って煩い渉を横目にドカッと重たい身体を落として、不満気にその問いに答える。


「……その内来るんじゃない？さっきまで一緒だったし。」


Ｙ「…どうにも、素直じゃないね…お前は。」


渉の憎々しく溢した言葉に、思わずムッとして睨み付ける。
それから言い返したいのに、中々出てこない反論の言葉。
渉の言いたいことは…嫌と言うほど理解している。
口を開いたり噤んだり…、先の出ないそれにムッとしたまま諦めた。


そうやって落ち着きなく座っていたら、気まずそうに楽屋に入ってきて頭を下げる北山の姿が視界に映る。
たまが嫌味たらしく文句を言っていたけど、北山の謝罪に飽きれたように納得して台本を受け取っていた。


やっと手渡されたそれに、少しだけホッとする。
そんなおれの態度に、わざとらしく吐かれた溜息と共に渉が小さく呟く。


Ｙ「…心配なら、自分で渡せばいいのに。」


「…っ、別に、そんなんじゃ…」


無意識に否定してしまうセリフ。
振り向いた渉の目は、呆れていた。


渉がどこまでおれの気持ちを理解しているのかは、知らない。
ただ、度々こうやっておれの気持ちを代弁するかのように添えられるから、すぐに何も言えなくなってしまう。


(おまけに…)


さっきから色々チラついて、妙に落ち着かない。
思い出しては、何度も頭の中を振り払う。


北山の鎖骨に残る、これ見よがしなその痕跡。
見たくないのに、それだけをはっきりと意識してしまう。
ガシガシと頭を掻き毟っては、項垂れる。それの繰り返し。
ひとり、そうやって考えあぐねいていたら、渉の言葉に目敏く身体が反応してしまった。


Ｙ「……今日も例のゲームするの？」


例のゲーム、そのワードに俯いたまま固まる。


何らかのゲームにハマっている。
ただ曖昧にそれだけを話して、全てを打ち明けた訳じゃないけど、ほぼ毎日のようにそのゲームに没頭するおれを心配してくれる渉。
チラッと渉の顔を見上げれば、やっぱりその瞳は呆れたような物言いで。


Ｙ「…仕事に差し支えない程度にしなよ。」


優しく、諭すように注意される。


わかってるよ。
わかってるけど…、
あの魅力的すぎる世界は、やめられない。

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