ナイショの恋していいですか？

１３.Ｆ ページ13

ただリアルだと実感できるから。
貪欲に、思うがままにそれを求める。
幻でも何でもなくて、肌から直接伝わるその熱は、確かにおれのモノだと実感できるから。
ただ、ひたすらにおれの全てを刻み付ける。


飛ばした意識を横目に、ふわふわと目の前で揺れる髪の毛にそっと触れる。
少し触れるだけで、愛おしい気持ちが溢れてしまう。


「おやすみ…」


汗で張り付く髪を掻き分け、露わになった額にそっと口付けた。
夢なのか現実なのか…時々わからなくなる自分は相当可笑しいのかもしれない。


(単に…リアルだったらいいのにって、)


幾度となく思い込んだ。


脱ぎ捨てたシャツを拾って、袖を通す。ボタンに指をかけたところで、部屋の空気がフワッと動いた。
背中に感じる視線に、またそのベッドに腰を落とす。


「なんだ、起きちゃったの？きたやま。」


Ｋｉ「…ん…、なに、どっか行くの？」


寝ぼけ眼のまぶたを擦って、シーツに沈んだ裸体を起こす北山。
その妖艶でやらしい姿に、吐き出した熱がまた集中してしまう。


(さっき散々抱き潰したくせに、どんだけだよマジで…)


そうやって北山に見つからないように少し俯いて、自嘲気味に笑ってしまう。


Ｋｉ「……ふじがや？」


「ん、何でもない。」


どこか不安気に揺れる瞳。心配ないと伝わるように柔らかい頬に唇を落とす。


Ｋｉ「…またキス…、」


「なに、不満？(笑)」


Ｋｉ「さっきデコにもちゅーしたじゃん。」


ムッとしたような声音だけど、気恥ずかしそうにおれから瞳を逸らしていく。
こうやって、当たり前に好きだと伝えられる行為が、この上なく幸せだ。
どこか素直じゃない北山の姿が、もうひとりの北山と少しだけ重なる。


「起きてたの？言ってよ(笑)」


Ｋｉ「…無理。恥ずい。空気が。」


「お腹すいた。なに食べたい？」


向こう向いたまま、全然振り返らない北山の髪を撫でながら聞く。
北山の性格は、大体把握している。
飯の話を振った途端、パッと顔を上げて、キラキラと両目を輝かせている。


(まるで小動物…)


クスッと自然と溢れる笑みを我慢して、キラキラと輝く瞳をジッと見つめる。


Ｋｉ「お前の作るフレンチトースト。」


うん、そう言うと思った。
北山を抱いた後、必ずそう言うのを知っている。
ふと、疑問に思って何の気無しに聞いたこと。


『…お前の作るフレンチトースト、なんか…幸せになれるから。』


たったそれだけで、積み重なっていく好きの気持ち。

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