ナイショの恋していいですか？

１.Ｋｉ ページ1

自分の願望を思い浮かべて…想像する。

ダイブするまで約10秒。


10、9、8…


頭の中でカウントする。緊張で無意識に止まっていた息を吐き出す。
真っ暗な世界に差し込んでくる淡い光。その光を求めて手を伸ばす。


「…やま…、おーい、きたやま…、」


聴き慣れた安心するその声。
だんだんとはっきり浮上する意識。
伸ばした手に、幾分か細長い指先が絡む。
瞬間、グッと身体が引っ張られて、閉じられていた瞼が開放される。


「…あ…っ、」


チカチカと突き刺すような眩しい光に、一瞬、眉を潜める。きゅっと絡む指先に反応して、自分も同じように力を込めた。
眩しい光を遮るみたいにそっと頭上に陰る人影。
覚醒した意識に、しっかりとその人物を認識して、小さく微笑む。


「…藤ヶ谷、」


Ｆ「…本当、どこでもよく寝るよね。あまりこんなとこで無防備に眠りこけないでほしいんだけど。」


飽きれたような、怒っているようなそんな表情。
掴まれた指先から手のひらを包まれて、落ちていた腰を引き上げるように藤ヶ谷の腕が力強く引き寄せる。
勢い余った反動で、踏ん張りが効かない身体。
支えきれずにそのまま藤ヶ谷の胸元へと突っ込んでしまう。


Ｆ「…っと、大丈夫？」


「あっ…、」


思わぬ距離を表すように、目の前には憎たらしいほどに整った藤ヶ谷のフェイスラインが広がる。
小さく跳ねる心臓がどこか気恥ずかしさを主張するみたいに、酷く煩い。


Ｆ「……、」


ふと、お互いの間に流れる沈黙。
何か粗相をしたんじゃないかと、焦り…戸惑いながら、そっと藤ヶ谷を見上げる。


「…ふじがや…？」


見上げた視線に、自然と絡むそれ。
小さく、切なげに震える睫毛。
その愛おしそうに醸し出される雰囲気に、無意識に小さく息を呑む。


熱く絡む視線から、藤ヶ谷の瞳がそっと外れていく。
一房掴まれた髪の毛に、まるで神経全て通っているようなありえない感覚。
ツンと、引っ張って藤ヶ谷が遠慮がちに口を開いた。


Ｆ「…生放送…始まるよ？歌のリハすっぽかして、大丈夫？」


少しだけイジケテ見えるその姿に、思わず苦笑する。
声も出さずに、肩でクスクスと笑うおれに、掴まれた髪の毛がさっきよりも幾分か強い力で何度もツンツン引っ張っていく。


「ごめんって(笑)…痛いからもうやめろ。」


笑いまじりに告げたセリフに、ピタッと藤ヶ谷の指先が止まる。その後クシャッと撫でられた髪が妙に熱い…
じゃなくて、多分…この雰囲気が恥ずかしいんだ。

２.Ｋｉ→

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