10.Ki ページ10
諦めたくなくて、ダメ元で気持ち曝け出して、受け止めてくれて、舞い上がって。
それだけでも、充分じゃないか。
心まで掴めなくても。
最後にはおれの元に戻ってくる。
それに自惚れていたかもしれない。心のどっかでそう思い込んでいた。それが凄く…すごくイヤだ。
どうにか乗り切った収録。
バタバタとスタッフが行き交う中で、重い足を引きずりながら楽屋へと向かう。
ぼうっと思考がままならないまま、瞬間、鼻孔をくすぐるその香り。
堪らなくおれの心を震わせる香りに、引きずっていた足取りが止まる。
おれの隣をサッと歩いていくスタッフを盗み見る。
お互いに絡む視線、びっくりして思わず逸らした視線に嬉しそうな挨拶が飛ぶ。
大「お疲れ様です!北山さん、」
「…おつかれ。」
若くて可愛くて、どこかほっとけない危うさ。
そんな雰囲気を醸し出して…
それで、その姿でお前はあいつを惑わすの?
嫌ってほど染み付いた香り。
幾度となくその香りに包まれてきた…はずだった。
廊下の真ん中で立ち往生して、言いたくないのに止まらない唇。
「……ひとつだけ、聞いていい?」
若さと無防備さを兼ね備えた大石に、どうしても聞いておきたい。
いや、聞いて…楽になりたかったのかもしれない。
胸に渦巻く疑問を。
「…お前と藤ヶ谷ってさ、」
大「あっ、はい!//」
そこまで言って、先を確信したかのように大石の返事がおれの言葉を遮る。
大「実は、お付き合いというものをさせて頂いてます!」
大石のはっきりとした物言いに聞きたかったこっちが、面喰らってしまう。
「…よく、そんなはっきりと…、」
散々悩んで膨らませて、でも閉じ込めて。ある時爆発した気持ちをおれとは違って、意図も簡単に放ってみせる。
羨ましい、けどその一途な若さが怖い。
呟いた言葉に大石の言葉が重なる。
大「……北山さんだからですよ。」
「…っ、え?」
大「…北山さんも、おれと同じ、ですよね?」
なんの疑問も持たずに確信めいた言葉。
その読み取れない表情にひゅっと喉が詰まって、なにも言えなくなる。
大「北山さんと藤ヶ谷さんって、」
さっきおれが聞いた言葉通り、大石がわかったようにおれに向かって放つ。その先をどうしても言えない、いや、言いたくない。
「違う!!おれと藤ヶ谷、何にもないから。」
そんなバカみたいに漫画にでもあるようなタイミング。
照れたような大石の微笑みと背後に感じるその香り。
本当、最悪だ。
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蜜柑(プロフ) - 絢音さん» 絢音さーんヽ(^◇^*)/ ワーイコメントとっても嬉しいですーありがとうございます!!どうにかこうにかカタチにしましたが大丈夫でしょうか…オマケは私の欲望満たすために書きました笑 (2019年10月4日 21時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - 蜜柑さん♪完結おめでとうございます!両想いのはずなのに拗らせ輔ちゃんが暴走しまくっていてハラハラしましたが、ようやくお互いの気持ちが分かった時はホッとしました!オマケのみったん…最高です(〃ω〃)ありがとうございました♪ (2019年10月4日 6時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - まりさん» こんにちは!コメントありがとうございます(T ^ T)とっても嬉しいです〜〜是非また遊びにいらして下さいませヽ(^◇^*)/ ワーイこれからもよろしくです♪ (2019年10月3日 11時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 藤北ラブさん» こんにちは(*^^*)こちらこそ最後まで読んで頂き感謝です!楽しんで頂けたなら嬉しいです!ありがとうございましたヽ(^◇^*)/ ワーイ是非またいらして下さいませ☆ (2019年10月3日 11時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 蜜柑さん。こんばんは!毎回更新楽しみにしてました!藤ヶ谷さんの狂ってる愛情も最後のみっくんの可愛さも最高でした!素敵なお話ありがとうございます!またお話楽しみにしています! (2019年10月2日 22時) (レス) id: 9c7317f745 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月29日 18時